IBM PC XT

IBM PC XT (IBM Personal Computer XT)について

IBM PC XTは、1983年にIBMが発表したパーソナルコンピュータです。これは、オリジナルであるIBM PCの改良版として登場し、ビジネスユーザー向けの拡張性を強化したモデルでした。正式名称は「IBM Personal Computer XT」、型番は「IBM 5160」で、その名の通り「eXtended Technology」（拡張技術）を意味する「XT」が付けられています。

主な特徴

ハードディスク搭載: オリジナルのIBM PCから大きな進化として、ハードディスクドライブが搭載されました。これにより、データの保存容量が増加し、より実用的な利用が可能になりました。
拡張スロットの増加: オリジナルPCの5つから8つに拡張されたスロットは、様々な拡張カードを挿入でき、機能拡張を容易にしました。この拡張スロットは、後にISA 8ビットバスとして標準化されました。
オペレーティングシステム: PC DOS 2.0では、階層化ファイルシステムが採用され、MS-DOS 2.0も同様のシステムとなりました。
CPU: 4.77MHzで稼働するIntel 8088マイクロプロセッサを搭載しており、オプションでIntel 8087 数値演算コプロセッサを追加することも可能でした。

歴史

IBM PC XTは、当初128KBのメインメモリ、360KBのフロッピーディスクドライブ、10MBのハードディスクドライブなどを搭載していました。初期ユーザーは、IBMがより先進的なプロセッサや機能を搭載した次世代マシンを開発するだろうと期待していましたが、実際にはオリジナルPCのマイナーチェンジに留まりました。

しかし、1983年末には、XTの販売はオリジナルPCと並び、IBMは生産したものを全て販売し続けました。1984年には、より高性能なIBM PC ATが発売され、上位モデルとなりました。

その後、1986年にはCPUをIntel 80286に変更したPC/XT 286が発売されましたが、既にPC/ATが市場に出回っていたため、短期間で販売は中止されました。1987年4月には、PS/2 モデル 30に置き換えられる形で、IBMはXTの販売を終了しました。

基本仕様

CPU: Intel 8088 (4.77MHz)
メモリ: 256KB～640KB（標準）
外部記憶: 360KBフロッピーディスクドライブ×2、10MBまたは20MBハードディスク
ディスプレイ: MDAまたはCGA
キーボード: 83キーまたは101キー

拡張バス

XTの拡張バスは、オリジナルPCのバスをベースに、一部のレイアウト変更や制御信号の追加が行われました。このバスは、後のATバスのベースとなり、さらに8ビットISAとして標準化されました。8つの拡張スロットは、様々な拡張カードを接続するためのものでしたが、一部のカードは物理的な制約により、取り付けが困難な場合もありました。

ハードディスク

XTには、シーゲート ST-412ハードディスクが標準搭載されていました。これは、当時の他のマイクロコンピュータとは異なり、フロッピーディスクから起動することなく、ハードディスクから直接起動することができました。

オペレーティングシステム

XTには、通常PC DOSが付属しており、発売当初はPC DOS 2.0、販売終了時にはPC DOS 3.2でした。また、ROMにIBM BASICが標準搭載され、IBM Advanced BASIC (BASICA)プログラムがDOSに含まれていました。

その他

IBM PC XTのBIOSは、POSTの際にメモリーのカウントを表示しました。デスクトップケースはオリジナルのIBM PCと似ており、重量は約14.5kg、サイズは約50cm(幅)x40cm(奥行き)x14cm(高さ)でした。電源ユニットは当初120ボルトのみでしたが、後に240ボルト対応モデルも発売されました。

モデルバリエーション

5160 XT
モデル 084: 標準搭載メモリ128KB
モデル 086: 標準搭載メモリ256KB, IBM 3270エミュレータ用にスロット8を変更
モデル 068, 078: フロッピーディスクモデル
モデル 568, 588, 589: XT/370 (System/370エミュレーション)
5160 拡張ユニット: XT用拡張シャーシ。拡張スロットを8つ搭載。
5162 (XT 286): Intel 80286 (6MHz)搭載モデル。PC/ATの下位モデル。

まとめ

IBM PC XTは、IBM PCの拡張版として登場し、ハードディスクの搭載や拡張スロットの増加など、ビジネス用途に合わせた改良が施されたモデルです。その拡張性から、さまざまな分野で活用され、後のパーソナルコンピュータの発展に大きく貢献しました。

参考資料

IBM (1983). Personal Computer Hardware Reference Library: Guide to Operations, Personal Computer XT. IBM Part Number 6936831.
本家IBM PCの歴史（1）～IBM PC誕生（元麻布春男）

関連項目

IBM PC互換機
PCサーバ

外部リンク

* IBM 5160 information at www.minuszerodegrees.net

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