ICE TD

ICE TD：ドイツ鉄道の車体傾斜式気動車

ICE TD（Baureihe 605）は、ドイツ鉄道（DB）が高速鉄道ICEの技術を非電化路線へ導入するために開発した車体傾斜式気動車です。ICE Tをベースに開発され、605形として2001年に4両編成20本が製造されました。

開発と経緯

ICE TDは、ICEによる高速化の恩恵を非電化路線にも拡大することを目的に開発されました。しかし、2001年6月のミュンヘン - チューリッヒ間やベルリン - ドレスデン間などでの運行開始後、車体傾斜装置の不具合が頻発し、2003年には全車が運用を一時離脱するという事態に見舞われました。

2007年からは、ハンブルク - コペンハーゲン間の「渡り鳥コース」に投入され運用を再開。しかし、老朽化やメンテナンスコストの問題から、2017年10月に全車が運用を終了しました。

車両設計

車体はICE Tとほぼ同じ形状で、アルミニウム合金を採用し軽量化を図っています。4両編成で、最大3編成までの併結運転が可能です。また、ICE Tとの協調運転にも対応しています。

車体傾斜機構はシーメンス製を採用。動力伝達方式は電気式で、1両あたりの機関出力は560kW、編成出力は2,240kWです。

編成は以下の通りです。

605.0形：1号車・制御車・動力車・2等車
605.1形：2号車・動力車・2等車
605.2形：7号車・動力車・2等車・簡易供食スペース
605.5形：8号車・制御車・動力車・1等車

運用

当初の運用

2001年7月に営業運転を開始しましたが、車体傾斜装置の制御プログラムのトラブルが頻発し、定時運行に支障をきたすようになりました。2001年には工場内で車両がジャッキから転落し、修復不能となった2両が廃車。2002年には車軸折損による脱線事故が発生し、車体傾斜装置の使用が停止されました。2003年12月には全編成が定期運用から離脱し、機関車牽引のインターシティや近郊用気動車に置き換えられました。

2006年には、サッカーワールドカップの観客輸送に使用され、メッセ会場への輸送など臨時列車として活躍しました。

デンマークへの直通

ハンブルクとコペンハーゲンを結ぶ「渡り鳥コース」では、IC3気動車によるユーロシティの一部を置き換える形でICE TDが導入されました。2007年4月に最初の試運転が行われ、同年12月に営業運転を開始。ベルリン・ハンブルク間では200km/h、ドイツ国内のその他区間では140km/h、デンマーク国内では180km/hで運転されました。

合計13編成がデンマーク直通対応改造を受け、保安装置や無線装置の設置、荷物収納設備の拡張などが行われました。車両はドイツ鉄道からデンマーク国鉄へ貸し出され、両社のロゴが併記されました。ドイツのプットガルデンとデンマークのロービュを結ぶフェーマルン・ベルト海峡では、鉄道連絡船による航送が行われていました。

しかし、2015年に入り、運行継続には大規模なオーバーホールが必要となり、その費用が高額となることが判明。ドイツ鉄道は2016年末でリース契約を解除しました。デンマーク国鉄には車両を買い取るオプションがありましたが、行使されず、2016年12月11日のダイヤ改正で1編成を除く全車両が運用から離脱。唯一残った編成も2017年10月に運用を終了しました。

一部編成は、その後測定などの試験車両として現存しているようです。

保存

2021年には、Tz5516編成がICEシリーズを代表する保存車としてコブレンツの博物館へ回送され、保存されることになりました。

参考文献

『世界の高速列車II』 地球の歩き方、ダイヤモンド社、2012年、200頁-205頁。ISBN 978-4-478-04279-3。

外部リンク

ICE-TD - Hochgeschwindigkeitszüge

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