ユーロシティ

ユーロシティ：ヨーロッパを結ぶ国際列車

ユーロシティ（EuroCity、略称EC）は、ヨーロッパ各国を結ぶ国際列車の種別です。「ヨーロッパ都市間特急」とも呼ばれ、主要駅にのみ停車する優等列車として知られています。最高速度は一般的に200km/h以下で、ICEなど高速鉄道が運行されている国では、それらに次ぐ位置づけとなっています。

歴史

前史：TEEとインターシティ

ユーロシティの運行開始以前、西ヨーロッパでは1957年から一等車専用の国際列車であるTEE（Trans Europ Express）が運行されていました。TEEは最盛期にはヨーロッパ11ヶ国を結び、多くの国際列車が運行されていましたが、1970年代に入ると二等車の需要が高まり、TEEの一部は通常の特急・急行列車に置き換えられるようになりました。

さらに、西ドイツでは1979年に二等車を連結するインターシティが全路線で運行開始され、TEEであった国際列車の一部も西ドイツ国内ではインターシティとして運行されるようになりました。1980年からは国際列車にも「インターシティ」の名称が用いられるようになり、国際インターシティとして多くの路線が運行されました。フランスのTGVの一部もインターシティとして扱われていました。

ユーロシティの発足

TEEや国際インターシティに替わる新たな種別として、1987年5月、ユーロシティが発足しました。ユーロシティとして運行されるためには、一等車と二等車の両方の連結、食堂車の設置、表定速度90km/h以上（山岳路線は80km/h）、主要都市への停車のみ、深夜の停車の禁止、乗務員と駅員の複数言語対応、国境通過時の車内での出入国管理、多電源対応機関車の使用、特急料金徴収、沿線に因んだ列車名の設定などが条件として挙げられていましたが、必ずしも全ての条件が満たされていたわけではありませんでした。

1987年夏ダイヤでは、64往復のユーロシティが運行され、そのうち7往復は夜行列車でした。これらの列車は、ヨーロッパ13ヶ国、およそ200都市を結んでいました。多くの昼行ユーロシティは国際インターシティからの変更でしたが、新規設定や、インターシティ以外の特急・急行列車からの変更もありました。しかし、全ての国際インターシティがユーロシティになったわけではなく、一部はインターシティのまま運行され続けました。

東ヨーロッパへの拡大

ユーロシティの発足当初は西ヨーロッパでのみ運行されていましたが、1980年代後半から東ヨーロッパへの運行が拡大しました。東欧革命後には、チェコスロバキア、ポーランド、スロベニア、クロアチアなどにもユーロシティが乗り入れるようになり、冷戦時代に東側諸国で運行されていた国際急行列車の一部もユーロシティとなりました。

サービスの変遷

ユーロシティは、発足当初は路線ごとに1～数往復程度の運行でしたが、その後、主要区間では2時間間隔などの等間隔ダイヤを導入する路線も現れました。一方で、食堂車が廃止され車内販売のみとなる列車も出てきました。また、2000年代に入ると、列車名のないユーロシティも登場し、TEE以来の伝統を持つ列車名が多く消滅しました。

高速鉄道による置き換え

高速鉄道網の発達により、ユーロシティは一部路線で高速鉄道に置き換えられました。ICEやTGVなどの高速列車は、ユーロシティとは別の種別とされ、西ヨーロッパのユーロシティ路線は減少傾向にあります。2010年時点では、ユーロシティは中欧諸国を中心に、高速化から取り残された系統で運行されています。イギリス、スペイン、オランダなどでは既にユーロシティは廃止され、フランスでも東部の一部路線に残るのみとなっています。

車両

ユーロシティは、ほとんどが電気機関車牽引の客車列車です。使用される客車は、各国のインターシティまたはそれに相当する優等列車用の客車です。複数の国の客車を連結した編成も存在します。電車や気動車を使用するユーロシティも一部存在します。

料金・座席指定

ユーロシティの利用には、運賃の他に特急料金が必要です。ユーレイルパスなどの鉄道パスには特急料金が含まれている場合もあります。座席指定には更に指定料金が必要で、ポーランドでは全車指定席となっており、予約が必須です。イタリア発着のユーロシティやベルリン-ワルシャワ間の列車では、包括運賃制度を採用しており、予約が必須で、料金は購入時期などによって異なります。

主な系統

2014年現在の主な系統としては、ブリュッセル-バーゼル、ハンブルク-コペンハーゲン、ベルリン-ワルシャワ、ベルリン-プラハ、プラハ-ブラチスラヴァ-ブダペスト、フランクフルト・アム・マイン/ミュンヘン-クラーゲンフルト/グラーツ、ミュンヘン-イタリア、ハンブルク-バーゼル-クール、スイス-イタリアなどがあります。各系統の詳細については、個別の資料を参照ください。

過去の系統

過去には、パリ-ブリュッセル-アムステルダム、パリ-ケルン/ドルトムント、パリ-フランクフルト/ルクセンブルク、パリ-ミュンヘン、パリ-バーゼル-チューリッヒ、リヨン-ミラノ、ブリュッセル-ケルン、アムステルダム-ケルン/フランクフルト、フランクフルト-ウィーン、ミュンヘン-ウィーン、ハンブルク-オーフス、ミラノ-ニース、ウィーン-ヴェネツィア、プラハ-ウィーン-ウィーナー・ノイシュタット、チューリッヒ-ミュンヘン、チューリッヒ-ウィーンなど多くの路線でユーロシティが運行されていましたが、高速鉄道の導入などにより、多くの路線で廃止されています。

もう一度検索