ICON (人工衛星)

ICON (Ionospheric Connection Explorer) について

ICONは、アメリカ航空宇宙局（NASA）が2019年に打ち上げた地球観測衛星であり、エクスプローラー計画の一つとして位置づけられています。このミッションの主な目的は、地球大気の上層部である電離層と熱圏を観測し、太陽からのエネルギーや地球の気象現象がこれらの領域にどのような影響を与えているかを詳細に研究することです。特に、電離層におけるプラズマの分布と変動のメカニズムを解明し、より正確な宇宙天気予報の実現を目指しています。

観測の概要

ICONは、電離層の風速や温度、大気光などを2年以上にわたり継続的に観測するミッションです。宇宙からの影響（太陽光、太陽風、磁気圏など）と地球からの影響（下層大気の気象や大気波など）がどのように組み合わさり、電離層のプラズマ分布と変動を引き起こすのかを、大気電気学と大気力学の観点から研究します。これにより、宇宙天気予報の精度向上に貢献することが期待されています。

ICONの観測は、NASAが以前より進めていた「GOLD」プロジェクト（SES-14衛星に搭載された遠紫外線イメージャによる電離層観測）と連携して行われます。これにより、低軌道を周回するICONと静止軌道から西半球を観測するGOLDが協力し、電離層の全体的な変動を捉えることを目指しています。

開発と打ち上げ

ICONの開発と製造は、オービタルATK（現ノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズ）が主契約者として担当しました。衛星プラットフォームにはLEOStar-2が採用され、電離層を観測するための4種類の観測機器が搭載されています。衛星の観測運用は、ミッションを提案したカリフォルニア大学バークレー校の宇宙科学研究所によって行われます。ミッションの総コストは約2億5200万ドルです。

当初、ICONは2017年に打ち上げられる予定でしたが、ペガサスXLロケットの不具合により、打ち上げは数回延期されました。最終的に2019年10月11日、ケープカナベラル空軍基地から打ち上げに成功しました。

搭載機器

ICONには、以下の4つの主要な観測機器が搭載されています。

1. 高分解能熱圏イメージング・マイケルソン干渉計（MIGHTI）
- 熱圏における中性大気の風速と気温を測定します。ドップラー効果を利用して、微小な風速変化も検出できます。2台の機器が衛星の進行方向に対して斜め前と斜め後ろに配置されており、風のベクトルを立体的に捉えることが可能です。アメリカ海軍研究所(NRL)が開発しました。

2. 遠紫外線イメージャ（FUV）
- 遠紫外線の波長領域で大気光を観測します。昼側では、太陽光で励起された酸素と窒素の発光を観測し、上層大気における原子と分子の分布を調べます。夜側では、酸素イオンが再結合する際に発する光を観測し、酸素イオンの分布を計測します。カルフォルニア大学バークレー校が開発しました。

3. 極紫外線イメージャ（EUV）
- プッシュブルーム方式のイメージング分光計であり、酸素イオンの共鳴散乱によって発生する極紫外線（波長61.7nmおよび83.4nm）を観測し、酸素イオン密度の高度分布をプロファイルします。こちらもカルフォルニア大学バークレー校による提供です。

4. イオン速度測定装置（IVM）
- プラズマイオンの速度、温度、密度を観測します。テキサス大学ダラス校宇宙科学センターが開発しました。この装置は、過去にC/NOFS衛星にも搭載され、観測を行っています。

まとめ

ICONは、電離層と熱圏における複雑な相互作用を解明するための重要なミッションであり、宇宙天気予報の精度向上に大きく貢献することが期待されます。これらの観測データは、宇宙環境の変化が地球に与える影響を理解する上で非常に貴重な情報源となるでしょう。

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