ID PHOTO

iD PHOTO（アイディーフォト）は、1999年にオリンパス光学工業、三洋電機、日立マクセルの3社が共同で発表した、記録容量730MB、直径50mmの書き換え可能な小型光磁気ディスク規格です。デジタルカメラ向けの次世代大容量メディアとして開発されました。

規格

iD PHOTOのベースとなったのは、AS-MO（Advanced Storage Magnet Optical）技術です。AS-MOをデジタルカメラ向けに小型化し、メディア、カートリッジ、論理フォーマット、ファイルフォーマットを規格化したものがiD PHOTOです。従来の120mmのAS-MOディスクに対し、iD PHOTOのメディアは直径50.8mmと大幅に小型化されており、カートリッジを含めたサイズもMD（ミニディスク）よりもさらにコンパクトで、Clik!（イメーションが発売していたリムーバブルメディア）と同程度でした。

記録方式には、AS-MOと同様の磁界変調方式（MFM～Magnetic Field Modulation）を採用し、トラックピッチやビット長もAS-MOに準拠しています。小型ながら730MBという大容量を実現していた点が大きな特徴です。メディアのフォーマットには、DVDにも採用されているUDF（Universal Disk Format）を採用しており、DCF（Design rule for Camera File system）準拠のディレクトリ構造と、静止画（JPEG、DCF準拠）、音声（Exif2準拠）、動画（QuickTime準拠）の各ファイルフォーマットが規定されています。

iD PHOTOの規格は、2000年11月20日に規格書として発表され、2005年5月には国際規格IEC62345として承認されました。これにより、国際的にも認められる規格としての地位を確立しました。

製品

ディスクは日立マクセルが製造を担当し、ドライブは三洋電機とオリンパス光学工業が共同で開発しました。iD PHOTOは、三洋電機が発売したデジタルカメラ「iD-Shot（IDC-1000Z）」の記録媒体として採用されました。2000年10月1日に製品発表が行われましたが、発売は一度延期となり、2001年2月1日に店頭に並びました。また、2001年10月19日には、三洋電機がメモリカードの画像をiD PHOTOディスクに記録できる「iDstorage」を発売しています。

現状

2001年当時、半導体メモリ（コンパクトフラッシュなど）は容量が小さく、高価でした。iD PHOTOディスクは730MBで2000円程度と、メガバイト当たりの単価が半導体メモリよりも2桁低く、価格競争力があると期待されました。しかし、その後半導体メモリの大容量化やPCとの親和性の向上、大幅な価格下落が進み、iD PHOTOの容量とコストのメリットは薄れていきました。

さらに、デジタルカメラの高画素化が進み、iD-Shotの150万画素というスペックでは競争力を維持することが困難になりました。そのため、iD PHOTO製品は普及に至らず、後継機種や新規採用製品も販売されることはありませんでした。結果として、iD PHOTOは市場から姿を消すこととなりました。

脚注

参考文献
日本応用磁気学会誌vol. 25, (no.3-2), pp.339-342, (2001)「iD PHOTO, a New MO Disk for Digital Still Cameras」
SANYO TECHNICAL REVIEW Vol.33 No.2 (2001)
関連項目
半導体レーザ
磁気ヘッド
規格争い
外部リンク

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