コンパクトフラッシュ

コンパクトフラッシュ（CF）とは

コンパクトフラッシュ（CompactFlash, CF）は、1990年代後半から2000年代後半にかけて広く利用された、小型のカード型インターフェース及びその規格に基づく拡張カードです。当初はフラッシュメモリを用いたメモリーカードとして普及しましたが、ノートパソコンの拡張インターフェース、産業用・組み込み用としても活用されました。

CFの概要

CFは、サンディスクが中心となって設立したコンパクトフラッシュアソシエーション（CFアソシエーション）が策定した規格です。1994年にサンディスクが開発したため、「コンパクトフラッシュ」は同社の登録商標ですが、他のメーカーは「CFカード」などとして販売しています。

CFカードは主に補助記憶装置として使われ、1990年代後半から2010年代前半にかけて、デジタルカメラなどの民生機器に広く採用されました。また、CFカードサイズの1インチHDDであるマイクロドライブも存在しました。

CFカードにはTypeI（厚さ3.3mm）とTypeII（厚さ5mm）の2種類があり、TypeIは多くの製品で採用され、TypeIIは内部に何かを組み込んだ製品に使われました。

インターフェース

CFはパラレルATA接続を採用し、当時普及していたPC[[カード]]（ATAカード）と電気的な互換性があります。これにより、変換アダプターを介してPC[[カード]]スロットに接続でき、アダプターの製造コストを抑えることができました。CFカードのサイズもPC[[カード]]に準じており、ノートPCでPC[[カード]]と同じ感覚で利用できる利点がありました。

また、CFカードはBluetoothやLANなどのI/Oデバイスにも使われ、1998年には電力容量を拡張したCF+規格も登場しました。2000年頃にはCFスロットを標準搭載したノートPCも発売されましたが、USB接続のカードリーダーの普及により、その数は多くありませんでした。

大きさと特徴

CFカードはPC[[カード]]の約3分の1の大きさで、「コンパクト」という名前が付けられていますが、他のフラッシュメモリカードと比較すると最も大きい規格です。そのため、小型機器には搭載できない欠点がありましたが、大容量かつ高速な転送速度が特徴で、デジタルカメラやPDAなどの機器で重宝されました。

2000年代後半には、microSDカードなどの小型規格が普及しましたが、プロフェッショナル向けのカメラではCFカードが引き続き採用されました。これは、メディアの小ささよりも大容量と高速転送が求められたためです。

後継規格

2011年、CFアソシエーションはCFの次世代規格としてXQDを発表しました。さらに、産業向けのCFとして、シリアルATA（SATA）接続に対応したCFast規格が登場しました。CFastはSATA-IIIインターフェースに対応したCFast2.0規格へと進化しました。

これらの規格は初代CFとの互換性はありませんでしたが、2019年にCFアソシエーションはXQDとCFastの次世代規格として、XQDとの後方互換性を持つCFexpress 2.0規格を発表し、次世代CFの規格が再び統一されました。

2022年現在、初代CF規格の開発は終了していますが、メーカーがメディアを販売し続ける限りは市場に存在し続けるでしょう。一般的に流通している最大容量は512GBで、理論上の最大容量は144PBとなっています。

デジタル一眼レフカメラとCFカード

1990年代後半から2000年代前半にかけて、デジタルカメラが普及し始めた頃、CFはスマートメディアと並ぶ代表的なメモリカードでした。コンパクトデジタルカメラはより小型のSDカードなどを採用しましたが、デジタル一眼レフカメラなどの高級機器では、高速かつ大容量のCFカードが継続して使用されました。

一部のデジタル一眼レフカメラは、CFとSDカードのデュアルスロットを搭載していましたが、SDカードの高速化やCFast、XQDなどの登場により、2010年代半ば頃からデジタル一眼レフカメラのメディアはこれらの規格に移行しました。

転送速度

CFの転送速度は、レキサー・メディアが制定したCDの1倍速である150KB/sを基準としています。規格の改定ごとにパラレルATA規格の更新が取り入れられ、CF Spec. Rev 6.0では最大167MB/sの転送速度を実現しました。

PC[[カード]]アダプタを介して接続する場合、16bit PC[[カード]]スロットでは速度が遅いため、高速なCFカードの性能を十分に発揮できません。この場合、CardBusアダプタやExpressCardアダプタを使用することで、高速転送が可能になります。

USBカードアダプタを介して接続する場合、USB2.0では速度が制限されるため、USB3.0対応のカードアダプタを使用する必要があります。

コンパクトフラッシュメモリーカード

CF規格は本来、フラッシュメモリを用いたメモリーカードを目的としています。CF規格では「コンパクトフラッシュストレージカード」と定義されていますが、一般的に「メモリーカード」として呼ばれます。

CFメモリーカードは、PC[[カード]]ATAの一部仕様を採用し、5Vと3.3Vの両電源に対応しています。サイズはタイプ1とタイプ2の2種類が基本ですが、CFスロットからはみ出すものや、厚みがさらに増したものも存在します。

ファイルシステムは規格で定義されておらず、CFAはFAT12、FAT16、FAT32を推奨しています。カードリーダーがATA対応であれば、CFメモリーカードをFAT32などで初期化できますが、ATAの容量制限には注意が必要です。

CF+規格に対応しないカードリーダーを使用すると、電源容量が不足したり、想定外の動作をすることがあります。近年では、データの大容量化に伴い、CF+規格でFAT32に対応した製品が増えています。

CF+カード

CF+カードは、CF規格を拡張したもので、必須仕様の一部を不採用にしたり、電源容量などを拡張することができます。電流容量を拡張したり、一方の電圧のみに対応させたり、68ピンATA互換を不採用にするなど、様々な拡張機能が追加されました。外形寸法もCFタイプ1をさらに厚くしたCF+拡張タイプ1が存在します。

CFastカード

CFastは、コンパクトフラッシュアソシエーションが策定した規格で、CFカードと同様の外観を持ちながらも、SATAインターフェースを採用し、高速な転送速度を実現しています。コネクタ形状が変更され、従来のCFカードとの互換性はありません。転送速度は従来のCFカードよりも大幅に向上しており、キヤノン製のハイエンドビデオカメラやデジタル一眼レフカメラなどに採用されています。

CFexpress

CFexpressは、PCIe 3.0とNVMe 1.2をベースにした規格で、XQDメモリーカードとの上位互換性を持っています。2019年にはCFexpress 2.0が策定され、2020年よりカメラの最上位機種を中心に各社から対応機器が発売されています。これにより、CFastとXQDに分かれていたコンパクトフラッシュの規格はCFexpressに一本化されました。

規格のあゆみ

コンパクトフラッシュは、その登場から現在に至るまで、様々な変遷を遂げてきました。

その他

日本IBMは1995年に発売したPalm Top PC 110の内蔵リーダーに「スマート・ピコ・フラッシュ」という名称を与えていました。また、他のメモリーカードをCFカードスロットで利用するための変換アダプターも存在します。

CFカードは、PC[[カード]]規格と電気的な互換性があるため、単純なアダプターを介してPC[[カード]]スロットで使用できました。また、パラレルATAとの互換性があるため、IDE変換して内蔵機器としても使用されました。これにより、古いPCの整備にデジカメ用のCFカードを再利用するなどの活用例もありました。

脚注

関連項目

拡張カード
PC[[カード]]
ExpressCard
ATA
マイクロドライブ
XQDメモリーカード

外部リンク

CompactFlash Association
CompactFlash pinout

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