IGES

IGES：CADデータ交換の国際標準フォーマット

IGES（Initial Graphics Exchange Specification）は、様々なCADソフトウェア間で設計データをスムーズにやり取りするためのファイルフォーマットです。アメリカ規格協会（ANSI）によって策定され、特に自動車業界で広く採用されていることから、事実上の世界標準となっています。3次元モデルデータの交換において、その重要性は非常に高いです。

IGESファイルは、複数のセクションから構成されるシンプルなテキストベースのファイルです。各行は固定長の80バイトで、アスキーコードで表現されます。このシンプルな構造が、異なるシステム間の互換性を高める上で貢献しています。

IGESファイルの構成

IGESファイルは、大きく分けて以下の5つのセクションから構成されています。

1. スタートセクション: ファイルの先頭に位置し、ファイル全体の開始を示す情報が含まれています。ファイルの種類やバージョン番号などが記述されます。
2. グローバルセクション: 設計データ全体に関するグローバルな情報を記述するセクションです。単位系や座標系の設定などが含まれます。
3. ディレクトリ・エントリーセクション: 設計データの各要素（点、線、面など）に関する情報を記述するセクションです。各要素は、このセクションで固有の識別子（エントリー番号）が割り当てられます。
4. パラメータ・データセクション: ディレクトリ・エントリーセクションで定義された各要素の詳細な幾何学的データなどを格納するセクションです。各要素の位置情報、形状情報などが記述されます。
5. ターミネートセクション: ファイルの末尾に位置し、ファイル全体の終了を示す情報が含まれています。

各セクションは、それぞれ決められたフォーマットに従って記述され、その構造は明確に定義されています。このため、異なるCADシステムであっても、IGESファイルを読み書きすることが可能になります。

IGESとJAMA-IS

日本自動車工業会（JAMA）は、IGESをベースとした独自の規格であるJAMA-ISを策定しています。JAMA-ISはIGESのサブセットであり、自動車業界特有のデータ表現方法を含んでいます。IGESよりも特定用途に特化した規格と言えるでしょう。

IGESとSTEP(ISO 10303)

IGES以外にも、CADデータ交換のための標準規格としてSTEP(ISO 10303)が存在します。STEPはIGESよりも高度な機能を備えており、より複雑な設計データを扱うことができます。しかし、その複雑さゆえに、IGESよりも扱いが難しい面もあります。用途やデータの複雑さによって、IGESとSTEPを使い分けることが重要です。IGESは比較的シンプルなデータ交換に適しており、STEPはより複雑なデータや製品ライフサイクル全体でのデータ管理に適しています。

まとめ

IGESは、異なるCADシステム間でのデータ交換を容易にする、重要なファイルフォーマットです。そのシンプルさ、汎用性、そして長年の実績から、多くの業界で広く利用されています。本記事ではIGESの概要と構成要素を解説しましたが、実際の運用においては、各CADシステムのIGESの処理能力や、データの正確性、互換性を十分に確認する必要があります。さらに、より高度なデータ交換が必要な場合はSTEPなどの他の規格も検討する必要があるでしょう。

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