ISO 10303

ISO 10303 (STEP) とは

ISO 10303、通称STEP（Standard for the Exchange of Product model data）は、工業製品データをコンピュータが解読可能な形式で表現・交換するための国際規格です。正式名称は「Industrial automation systems and integration - Product data representation and exchange」であり、ISO（国際標準化機構）によって策定されました。この規格は、特定のシステムに依存せず、製品に関するあらゆるデータを記述する仕組みを提供することを目的としており、単なるファイル交換だけでなく、製品データベースの実装基盤としても利用されています。

STEPは、CAD（Computer-Aided Design）、CAM（Computer-Aided Manufacturing）、CAE（Computer-Aided Engineering）、PDM（Product Data Management）、EDM（Engineering Data Management）などのシステム間でのデータ交換に広く使用されています。取り扱う製品データは多岐にわたり、機械設計データ、電子設計データ、分析データ、製造データ、さらには自動車、航空、建築、造船などの分野特有のデータも含まれます。

STEP の構成要素

STEPは、ISOの技術委員会であるTC 184（Technical Industrial automation systems and integration）の分科会SC4（Industrial data）によって策定・保守されています。この規格は、多数のパートから構成されており、それぞれのパートが特定の役割を担っています。

環境: 記述手法（EXPRESS、EXPRESS-X）、実装手法（STEP-File、STEP-XML、SDAI）、適合試験手法とフレームワークを定義します。

統合データモデル: 統合総称リソース、統合アプリケーションリソース、Application Integrated Constructs (AIC)、Application Modules (AM)などを定義し、データモデルの基礎を形成します。

トップパート: Application Protocols (AP)やAP向けのテストスイートを定義し、特定の応用分野に対応するデータ交換の仕組みを提供します。

各パートには、適用範囲や導入に関する章が含まれており、規格全体で数百のパートから構成されます。これらのパートは、毎年新たなものが追加されたり、既存のものが改訂されたりするため、ISOの標準規格の中でも最大規模を誇ります。

Application Protocols (AP)

APは、特定の応用や工業分野に対応しており、STEPのユーザーが最も頻繁に参照する部分です。各APには、特定の製品やデータ交換シナリオに適したConformance Class（適合クラス）が定義されています。また、IDEF0を使ったApplication Activity Model (AAM)が記述されており、適用範囲や必要な情報、利用シナリオを理解するのに役立ちます。

STEPの基本は、EXPRESSモデリング言語を使ったデータモデルの定義です。データ交換は、STEP-File、STEP-XML、またはSDAIによるデータベース共有を通じて行われます。各APには、Application Integrated Model (AIM)またはModule Integrated Model (MIM)と呼ばれるデータ交換用のトップデータモデルが定義されており、低レベルのデータモデル（統合総称リソースなど）で定義された汎用オブジェクトを組み合わせて、特定の応用分野に特化したデータ構造を構築します。

STEP の相互運用性

複数のConformance Classを持つAPでは、トップデータモデルが分割され、各部分が特定のConformance Classに対応します。STEP対応アプリケーションは、プリプロセッサ、ポストプロセッサ、AIM/MIMデータモデルに対応するSTEP-File、STEP-XML、またはSDAIの実装、そして1つ以上のConformance Classのサポートが要求されます。

初期のAPでは、Abstract Test Suite (ATS)が必要とされていましたが、現在では非形式的な評価リポートと推奨プラクティス（ハウツー）で代替されています。推奨プラクティスは、STEP実装の重要な情報源となっています。

Application Reference Models (ARM)

Application Reference Models (ARM)は、AAMとAIM/MIMの中間に位置し、当初はアプリケーションオブジェクトとその関係を文書化する役割を担っていました。初期のAPではIDEF1X図を使って非形式的に文書化されていましたが、APが複雑化するにつれて、EXPRESSがARMにも使われるようになりました。現在では、ARMがAIM/MIMの役割を果たすほど詳細化しており、ARMベースのファイル交換標準を持つAPも存在します。

モジュール型AP

各APは類似した製品や構造を扱うため、オーバーラップする部分が多く、相互運用性が課題となります。Application Integrated Constructs (AIC)は幾何学構造の面でこの問題を解決し、STEP modulesはARMモデル間の調和とAIMへのマッピングに対処します。モジュールを組み合わせてAPやトップデータモデルの適合クラスが構築されます。モジュール型APの例としては、AP203、AP209、AP210、AP221、AP236、AP239などが挙げられます。

STEP の歴史

STEPの開発は、1984年にIGES、SET、VDA-FSの後継として始まりました。1994年から1995年にかけて、ISOはSTEPを国際標準としてリリースしました。当初のパートには、記述手法、実装手法、基本データモデル、そして重要なAPであるAP203が含まれていました。その後、航空機、自動車、電気機器などの製品設計に対応するための拡張が行われました。現在では、STEP modular architectureに基づいた開発が進められており、既存のAPの改訂も行われています。

まとめ

STEPは、製品データの交換と共有を効率化し、製品開発プロセス全体の円滑な連携を支援するための重要な国際規格です。その詳細なデータモデルとモジュール構造により、幅広い産業分野での利用が可能となっています。今後も技術の進歩に合わせて、STEPは継続的に開発・改訂されていくでしょう。

関連規格
境界描写
Geometric Dimensioning and Tolerancing (GD&T)
ISO 16739 Industry Foundation Classes

外部リンク
Standardization group ISO TC184/SC4
List of STEP parts
STEP Ship team ISO TC 184/SC 4/WG 3/T 23
The STEP Module Repository on SourceForge
CAx Implementor Forum
STEP APPLICATION HANDBOOK ISO 10303 VERSION 3
WikiSTEP
CIMsteel Integration Standards (CIS/2)
PDES, Inc.
Product Life Cycle Support (PLCS) Resources
AP224

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