IMDS

IMDS（国際材料データシステム）について

IMDS（International Material Data System）は、自動車業界向けの材料データベースであり、ヒューレット・パッカードが運用を請け負っています。2010年5月現在、欧米日韓の主要な完成車メーカー26社が加盟しています。このシステムは、環境保護を目的とした様々な法規に対応するため、1998年にドイツ自動車工業会（VDA）が自動車に使用される物質データの収集システムを開発したことが始まりです。

IMDSの成り立ち

当初、アウディ、BMW、ダイムラークライスラーなど8社の完成車メーカーと独EDSが共同でIMDSを開発しました。その後、EDSはヒューレット・パッカードに買収され、現在ではヒューレット・パッカードがシステムの運用を行っています。

IMDSの概要

IMDSは、自動車に使用される部品の環境保全に関わる側面を管理するための共有データシステムです。このシステムを利用することで、自動車業界は、どの部品にどのような材料が使用され、最終的にどのコンポーネントに組み込まれているかを完全に把握できます。IMDSは、以下の法的背景を踏まえて構築されています。

法規で禁止された物質をサプライチェーンから排除する。
EUのELV指令（廃自動車指令）に従い、自動車のリサイクル率を高める。
部品製造業者は、正確な材料情報を提供する必要がある。

禁止物質と要申告物質

IMDSの基礎となるのは、禁止物質と要申告物質のリストです。これらの物質は、人体への健康、環境保全、リサイクルに影響を与える可能性があり、六価クロムのような禁止物質は法律や国際条約で使用が禁止されています。要申告物質は使用が禁止されているわけではありませんが、使用状況を報告する必要があります。

以前は各完成車メーカーが独自のリストを持っていましたが、IMDS導入に伴い、主要メーカーが協力してILRS（国際報告物質リスト）をまとめました。その後、2005年にはGADSL（グローバル自動車申告物質リスト）に置き換えられました。GADSLは、最新の法規制や調査結果に基づいて定期的に更新されます。

IMDSは、入力されたデータと禁止物質リストを照合し、危険性の高い物質を特定します。これにより、完成車メーカーはこれらの物質を追跡し、排除することができます。また、IMDSのマテリアルデータシート（MDS）には、全ての物質を1gまたはそれ以上の精度で記載する必要があります。

物質データの構造

IMDSでは、部品やユニットを階層構造で管理します。例えば、エンジンはコンポーネントであり、シリンダーブロックやボルトなどのサブコンポーネントから構成されます。サブコンポーネントは、鋳鉄やアルミなどの材料からなり、それらの材料は鉄や炭素といった化学物質から構成されます。IMDSで管理対象とするのは、この化学物質です。

コンポーネント: 部品そのもの（ねじ、トランスミッションなど）。
サブコンポーネント: コンポーネントを構成する部品（シリンダーブロック、ボルトなど）。
セミコンポーネント: コンポーネントの下位に属し、ある程度加工されたもの（管、板など）。
材料: 部品を構成する素材（S45C、プラスチックなど）。
化学物質: 材料を構成する物質（炭素、鉄、FKMなど）。

材料と化学物質の管理

材料のMDSは、原則として材料メーカーが発行します。ただし、規格で含有化学物質が規定されている金属材料など、IMDSステアリングコミッティ（IMDS SC）がMDSを公開しているものもあります。化学物質は、IMDSに登録されたBSL（基本物質リスト）から選択する必要があり、ユーザーが独自に登録することはできません。

化学物質の中には、材料メーカーが公開したくないものもあります。このような物質は、10重量%までであれば隠すことができます。機密扱いにしたり、ワイルドカード（ジョーカー）と呼ばれる分類にすることで隠蔽しますが、後々の規制に対応できるよう、少なくとも30年間はデータを保管する必要があります。

マテリアルデータシートの作成と承認

IMDSでは、サプライチェーンに沿ってMDSが発行・送信されます。コンポーネントメーカーは、サブコンポーネントメーカーや材料メーカーからMDSを入手し、自社製品のMDSをまとめ、上位のメーカーに送信します。汎用性のあるコンポーネントや材料は、公開MDSとして発行することも可能です。

IMDSは、入力されたMDSの内容を送信時にチェックする機能がありますが、全てをチェックできるわけではありません。MDSを受け取る側は、内容をチェックして承認する必要があります。不備がある場合は、拒否または修正要求が行われます。

IMDSへの入力は全て英語で行われます。コンポーネント名など、別の言語を併記することも可能ですが、英語での記述は必須です。部品番号や重量などの項目も必須入力です。社内でのみ有効な部品番号やサプライヤー名などは、任意で入力できます。

参考情報

IMDS Steering Committee: IMDS General Rules and Guide Lines

関連情報

ELV指令
REACH
リサイクル
六価クロム、水銀: 使用が禁止されている代表的な物質
MSDS: IMDSとは異なる目的のマテリアルデータシート

外部リンク

IMDSホームページ
GADSLホームページ

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