INCJ

株式会社INCJについて

株式会社INCJ（アイエヌシイジェイ）は、日本における官民ファンドの一つです。2009年に設立された前身である株式会社産業革新機構の事業を引き継ぎ、2018年に新たに設立されました。INCJは、次世代産業の育成を目指しており、今後2025年3月末をもって新規の投資を終了し、解散の準備を進めています。代表取締役会長には志賀俊之、代表取締役社長には勝又幹英が就任しており、いずれも2025年6月末でその職を退く予定です。INCJの本社は東京都千代田区に位置しています。

概要

INCJは、産業競争力強化法に基づく政府出資法人であり、産業革新投資機構（JIC）の完全子会社です。この組織は、オープンイノベーションを通じて、日本の新たな国富を生み出す産業の育成を基本理念としています。事業内容は、前身の産業革新機構が行っていた事業を受け継ぎ、法律に基づいた枠組みの中で運営されています。また、旧機構によって出資決定がされた案件に対しても支援を行っています。

2025年3月31日をもって、INCJは活動を停止し、その後6月以降に解散する見込みです。この間、法律で定められた15年の期間で114件の投資案件を実行し、2025年3月末時点での投資元本は1兆2823億円に対し、2兆3260億円を回収する成果を上げており、累計で1兆円を超える利益を記録しました。この利益は、特にルネサスエレクトロニクスの株式売却によるものであり、INCJにとっての大きな成功事例とされています。

旧産業革新機構からの分割背景

旧産業革新機構の活動期限が近づくにつれ、政府は官民ファンドの再編成を行い、2018年に新しい体制を整備しました。生まれ変わった産業革新投資機構（JIC）は、長期的かつ戦略的な産業支援に特化する形で設立され、INCJは既存の投資案件の処理に注力する役割を担うことになりました。また、旧機構には「大企業救済型ファンド」との批判もあったため、新体制では「新たな産業の創出」を目指す方針が強調されました。

分割後も、政府によるガバナンスに関する議論は続いており、役割分担や運営方針については変化が見られています。

主な出資案件

INCJは、2009年から2020年にかけて累計144件の出資を行いました。当初は中小型の技術系ベンチャーへの投資が中心でしたが、全体の約半数の投資額はルネサスエレクトロニクス、ジャパンディスプレイ（JDI）、JOLEDの3案件に集まっていました。

ルネサスエレクトロニクス

ルネサスエレクトロニクスは、2012年に経営危機に陥り、INCJは他の民間企業とともに総額1500億円の増資を支援しました。INCJは約1384億円を出資し、株式の69％以上を保有する筆頭株主となりました。その後、ルネサスは徐々に業績を回復させ、INCJは2019年までに株を市場で売却し、約3000億円の利益を得ました。この案件は、INCJにとっての最大の成功例とされており、利益の大部分がルネサスからもたらされたことに象徴されています。

ジャパンディスプレイ

ジャパンディスプレイ（JDI）は、2012年に設立され、INCJは当初2000億円を出資して、株式の約70％を取得しました。しかし、スマートフォン向け液晶需要の変動によりJDIは業績不振に陥り、INCJはさらなる資金支援を余儀なくされました。2023年3月時点における回収額は約3073億円に限られており、多額の未回収債権が存在します。JDIの再建は続いているものの、INCJの持株比率は低下しており、この案件は「最大の心残り」とされています。

JOLED

JOLEDは、有機ELパネルを開発する企業として2015年に設立され、INCJなどが出資を行いました。しかし、量産化に失敗し、2023年には経営破綻を迎えました。未回収の資金が多く、INCJはこの案件において追加投資を行わざるを得なかったことが課題として指摘されています。

まとめ

株式会社INCJは、日本の産業支援を目的とした官民ファンドとして活動してきましたが、2025年には解散を控え、その成果についてさまざまな議論が生じています。特に、ルネサスエレクトロニクスに関する投資は成功を収める一方で、JDIやJOLEDに対する投資は課題を残し続けています。今後の解散に向けた対応が注目されています。

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