IPS方式

IPS方式（In Plane Switching）

IPS方式とは、In Plane Switchingの略で、液晶ディスプレイの一形式です。液晶分子を基板と平行に配置して電界をかけ、光の透過を制御する技術です。この方式は主に広い視野角と色の忠実度に優れるため、テレビやモニターといった大画面の表示装置に多く利用されます。

概要

IPS方式では、液晶分子がガラス基板と平行に整列されるため、視野角が上下左右178度と非常に広いのが大きな特徴です。このため、どの角度から見ても色の変化が少なく、鮮やかな映像が楽しめます。一方、TN方式やVA方式はその構造上、視野角が限定的であるため、斜めから見ると映像が見えづらくなることがあります。

しかし、IPS方式にはいくつかの欠点も存在します。例えば、バックライトの光が漏れやすく、純粋な「黒」を表現するのが難しいため、映画鑑賞に適したディスプレイとしてはVA方式が優れています。また、コントラスト比が低いため、動きの速い映像が要求されるゲーム向けには、応答速度が速いTN方式が好まれる傾向にあります。

開発の歴史

IPS方式は1990年代にその技術が開発され、日立製作所がこの方式の商標を持っています。最初にこの技術の改善に乗り出したのは、日立研究所のチームであり、1992年に実用化に成功しました。1996年には世界初のIPSディスプレイが製品化され、その後「スーパーIPS」方式などの改良も加えられました。

2003年頃には、液晶市場がTN液晶からIPS液晶へと移行する動きが見られ、LGやNECなどの企業もこの技術を活用してパネルを製造するようになりました。しかし、液晶市場では競争が激化し、パネルの製造コストが問題視されました。特に、200木終わりから2010年代の初めにかけて、韓国や台湾のメーカーが製造技術を高め、コストを下げて市場に参入。日本の製造元は厳しい状況に置かれました。

技術の特徴とバリエーション

IPS方式は、その特性上、高精細な映像表現が可能です。視野角が広く、色の再現性に優れているため、デザインや編集作業に最適なディスプレイとして評価されています。その一方で、開発初期からコスト高が問題視され、一般向け製品には採用されにくい状況が続きました。

2009年には、LGがコストを大幅に抑えた「e-IPS」技術を開発し、一気に普及が進みました。この後、IPS方式はスマートフォンやタブレットPCにも採用され、特にApple社のiPhoneやiPadに用いられたことで、その知名度は大幅に向上しました。

他のIPS派生技術としては、AUOの「AHVA」やNECの「SFT」、Samsungの「PLS」などが挙げられます。これらはそれぞれ特有の特性を持ち、消費電力の低減やさらなる視野角の広さが求められる市場に応じて開発されています。

結論

IPS方式は近年、高画質が求められるテレビやスマートフォンのディスプレイとして益々普及しています。今後も新しい技術の開発が進むことで、さらなる高画質化やコスト減が期待されます。現時点でも、IPSパネルはその優れた性能によって市場の多くのニーズに応え続けています。

もう一度検索