VA方式

VA方式（Vertical Alignment）とは

VA方式は、液晶ディスプレイの表示方式の一つで、その名の通り、液晶分子を初期状態で垂直に配向させる技術です。この方式は、高いコントラスト比と広い視野角を実現できるため、高画質の液晶テレビに広く採用されています。2009年時点では、高品位液晶テレビの表示方式は、このVA方式とIPS方式が主流でした。

原理と特徴

VA方式では、ネガ型のネマティック液晶を使用します。電圧が印加されていない状態では、液晶分子は垂直に配向しており、光をほとんど通しません（黒表示）。電圧を印加すると、液晶分子が傾き、光が透過するようになります（白表示）。この時、液晶分子が特定の方向に傾くと視野角が狭くなるため、通常は液晶分子が複数方向に傾くように制御することで（マルチドメイン配向）、広い視野角を実現しています。

VA方式の最大の特徴は、その高いコントラスト比です。これは、液晶分子が垂直に配向していることで、黒表示が非常に暗くなるためです。初期には、ネガ型液晶の使用により応答速度や信頼性に課題がありましたが、技術の進歩によりこれらの問題は改善され、量産化に至りました。

また、VA方式は反射型ディスプレイにも適しており、反射型と透過型の両方を兼ね備えたディスプレイにも利用されています。ただし、この場合、視野角特性を調整するための位相差フィルムが必要になります。

歴史

VA方式の原理は1970年代に発見され、当初はDAP方式やVANと呼ばれていました。1990年代には、主にスタンレーによってパッシブ駆動方式として採用されましたが、アクティブ駆動方式への移行が進まず、一旦は衰退しました。

その後、富士通とメルクがTFT駆動とマルチドメイン技術を確立し、VA方式は再び注目を集めました。メルクが特許を持つネガ型液晶材料の独占的な供給や、ラビングプロセスが不要なことなどが、VA方式の普及を後押ししました。また、液晶注入技術のODF方式の開発により、生産性が向上し、液晶テレビ市場の拡大に貢献しました。

しかし、富士通ディスプレイテクノロジーは経営が悪化し、VA技術はシャープに売却されました。その後、シャープ、AUO、CMO（現イノラックス）、サムスン電子などが、VA方式の液晶パネルを量産するようになりました。

さらに、VA液晶に微量のUV硬化性モノマーを添加し、パネル注入後にUV硬化させるPSA技術（PSVA）が開発されました。これにより、従来のカラーフィルター側に必要だったリブ（突起物）が不要となり、開口率が向上しました。現在では、このPSA技術がテレビ用液晶パネルの主流となっています。

(＊PSA（Polymer Sustain Alignment) 、PSVA(Polymer Stabilized VA))

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