IRA暫定派

アイルランド共和軍暫定派 (IRA暫定派)について

アイルランド共和軍暫定派（Provisional Irish Republican Army、略称：PIRA）は、アイルランドの民族主義者による武装組織であり、一般には「プロヴォ」や「IRA暫定派」として知られています。1969年のIRA主流派からの分裂を経て設立されたこの組織は、「IRA」という名称を自称し、アイルランド全土を統治する国家の樹立を目指して武装闘争を展開してきました。その目的のために、一般市民、警察官、イギリス軍に対する数多くのテロ事件を引き起こし、アイルランド、イギリス、アメリカなど複数の国でテロ組織として認定されています。

結成の背景

IRAの起源は19世紀のアイルランド独立を目指したアイルランド義勇軍に遡ります。第一次世界大戦中のイースター蜂起やアイルランド独立戦争を経て、アイルランド国防軍が形成されました。しかし、1916年の革命後は、政治的な対立が激化し、独立を巡る内戦を経て、アイルランド共和軍が分裂。1969年に主流派から分かれたIAM暫定派は、武力による抵抗を選択しました。

1960年代後半、北アイルランドにおける政治的な差別が顕在化し、カトリック教徒を巡る暴力が増加したことが背景にあります。以降、暫定派は北アイルランド政府とその治安部隊に対して攻撃を仕掛ける戦略を採用し、主流派とは一線を画す活動を行いました。特に、武力闘争を重視したこの新たな組織は、その後の北アイルランド紛争の中心的な存在となります。

活動と戦略

IRA暫定派は、最初は主に北アイルランド内での襲撃と爆弾テロを通じて統治体制を揺るがすことを目指しました。1970年代に入ると、その活動はさらにエスカレートし、軍の施設や警察を標的にした攻撃が繰り返されました。特に「血の日曜日事件」（1972年）では、イギリス軍の発砲により14人の市民が命を落とし、この出来事は国際的な注目を集めました。

暫定派はまた、1981年にはハンガー・ストライキを通じて政治犯としての権利を求める運動を展開し、多くの支持を集めました。その結果、シン・フェイン党が政治に傾斜し、選挙での支持を受けるようになりました。1975年の一時的な停戦を経て、1980年代にはより長期的な戦略が採用され、IRAとシン・フェインの活動が連携を強化していきました。

武装放棄と和平プロセス

1990年代に入ると、和平の兆しが見え始めます。1994年にIRA暫定派は無期限の停戦を発表し、その後の和平交渉に参加。1998年にはベルファスト合意が成立し、IRAの武装解除に向けた取り組みが始まります。2005年には武装闘争の終息を宣言し、すべての武器を放棄しました。これにより、IRA暫定派は長い歴史の中での一つの節目を迎えました。

犠牲者と影響

北アイルランド紛争において、IRA暫定派が引き起こしたテロ活動は多くの犠牲者を生みました。推定では、1800人以上が彼らの行動によって命を落とし、多くの人々がそれにより傷つきました。その影響は今もアイルランドの社会や政治に及んでおり、平和の尊さを再認識させる課題として残り続けています。将来的には、イギリスとアイルランド間での協力がさらに進められ、過去の対立を超える新たな関係の構築が求められるでしょう。

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