IRIS (人工衛星)

IRIS（アイリス）とは

IRIS（Interface Region Imaging Spectrograph）は、太陽の彩層と遷移層を紫外線で観測する太陽観測衛星です。アメリカ航空宇宙局（NASA）のエクスプローラー計画によって2013年に打ち上げられました。このミッションは、太陽のエネルギーがどのようにコロナを加熱し、太陽風を駆動するかのメカニズム解明を目指しています。

概要

太陽の表面温度は約6000度ですが、その上空のコロナは100万度以上と非常に高温です。この温度差を生み出すメカニズムは、コロナ加熱問題として長年研究されてきました。IRISは、紫外線を観測することで、この謎に迫ろうとしています。

ロッキード・マーティン太陽・天体物理学研究所（LMSAL）によって提案されたIRISは、太陽光球からのエネルギーが彩層や遷移層をどのように伝わり、コロナを加熱するのかを明らかにしようとしています。この研究は、宇宙天気予報の精度向上にも繋がると期待されています。

NASAは、小型探査機SMEXシリーズの公募で選ばれた6つの候補の中からIRISを選択しました。IRISの製造とテストはロッキード・マーティン・スペースシステムの先進技術センター（LMATC）が担当し、打ち上げ後の衛星管制はNASAエイムズ研究センターが行っています。

2013年6月28日、IRISはカリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から打ち上げられました。母機スターゲイザーが高度12kmの洋上からペガサスロケットを発進させ、打ち上げは成功しました。

観測運用

IRISは、太陽同期軌道に投入され、年間8ヶ月間は地球の影に入ることなく連続して太陽観測が可能です。打ち上げから21日後の7月17日には、望遠鏡のドアが開きファーストライトを迎えました。

IRISは、太陽観測衛星「ひので」やSDO（ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー）と共同観測を実施し、異なる波長とスペクトルを同時に観測することで、コロナ加熱問題の解明を目指しています。2015年には、「ひので」との共同観測結果をスーパーコンピュータ「アテルイ」で解析した結果、波動の熱化現象が捉えられました。

さらに、コロナ加熱に寄与する別の要因として、太陽の黒点付近から内部コロナに向けて上昇する、おたまじゃくしのようなプラズマジェットが2019年に報告されました。

IRISの観測ミッションは、2016年9月に2年間延長されました。これは、IRISによる観測が太陽物理学の分野において非常に重要であることを示しています。

搭載機器

IRISには、主鏡口径19cm、焦点距離6895mmのカセグレン光学系を備えた紫外線望遠鏡が搭載されています。この望遠鏡は、175×175秒角の視野を持ち、太陽光球の100分の1の領域を0.33～0.4秒角の高解像度で撮影できます。

観測波長は、遠紫外線（133～141nm）と近紫外線（278～283nm）の2バンドで、ドップラーシフトによる視線方向の速度変化も計測可能です。この紫外線望遠鏡は、SDOに搭載されている紫外線望遠鏡AIAと同じく、スミソニアン天体物理観測所によって製作されました。

関連項目

• - 太陽物理学
• - プラズマ物理
• - アルヴェーン波

参考文献・外部リンク

• - NASAホームページ
• - ロッキード・マーティン太陽・天体物理学研究所ホームページ
• - eoPortal Directory

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