IWA三冠統一選手権

IWA三冠統一王座（アイ・ダブリュー・エー・さんかんとういつおうざ）は、かつて日本のプロレス団体、I.W.A.JAPANが管理・認定していたユニークなタイトルである。この王座は、同団体が認定するIWA世界ヘビー級王座、IWA世界ジュニアヘビー級王座、そしてAWF世界女子王座という、体重や性別の異なる三つの王座を統合して誕生した。単なる選手権タイトルに留まらず、管理団体であるI.W.A.JAPANが標榜する独自の哲学を体現するシンボリックな存在であったと言える。

王座創設の契機となったのは、2013年9月22日の出来事である。当時、AWF世界女子王座の保持者であったさくらえみ選手が、長らく王座決定戦が行われず空位となっていたIWA世界ヘビー級およびIWA世界ジュニアヘビー級王座との統一戦実施を提唱した。この提案が実を結び、同年11月16日、I.W.A.JAPANのリングが設けられた新宿FACE大会にて、構想された王座統一戦が実現した。この歴史的な一戦を制し勝利を収めたのが、提唱者であるさくらえみ選手その人であり、彼女が初代IWA三冠統一王者として認定されることとなった。

この王座の最も特筆すべき点は、そのレギュレーションにある。三つの異なる階級、さらには男子王座と女子王座を含むタイトルを一つに統合したことで、本王座は体重や性別といった従来のプロレスにおける区分けを一切問わない、真にジェンダーレスなタイトルマッチを可能としたのである。男子と女子の王座が同一のベルトとして争われる形式は、プロレス界全体を見渡しても非常に稀有であり、まさに異例中の異例と言える構造であった。これは、I.W.A.JAPANが掲げていた「二丁目マット」という、既成概念に囚われない自由なエンターテインメントを目指す理念と深く結びついていた。性別の垣根を越え、多様性を尊重する団体の姿勢が、この三冠統一王座という形となって具現化されたのである。この王座は、単に強さを競うだけでなく、管理団体のメッセージを発信する重要な媒体としての役割も担っていた。

王座の運用に関して、初代王者となったさくらえみ選手が所属するプロレスリング我闘雲舞のリングが、タイトルマッチの主要な舞台の一つとなった時期がある。これは、管理団体であるI.W.A.JAPANが、晩年には活動規模を縮小し、年間数回の興行に留まる状況であったため、王座の権威を維持し、選手権試合をコンスタントに行うために、提携関係にある他団体の協力を得た結果であった。我闘雲舞のリングにおいても、IWA三冠統一王座のタイトルマッチは組まれ、王座の歴史が紡がれていった。

しかし、このユニークな王座の歴史も、管理団体の活動に連動して終焉を迎えることとなる。2017年8月6日、I.W.A.JAPANは団体としての活動を休止することを発表した。これに伴い、IWA三冠統一王座もその存在意義を失うこととなった。王座のシンボルであるチャンピオンベルトは管理団体へと返還され、以降は選手権試合が行われることなく、事実上封印された状態となったのである。短命ではあったものの、体重・性別不問という革新的な試みと、管理団体の哲学を色濃く反映したその特異な存在感は、日本のプロレス史において独自の光を放つタイトルとして記憶されている。

もう一度検索