さくらえみ

さくらえみ

さくら えみ（本名：元川 恵美、1976年10月4日生）は、日本の女子プロレスラーであり、プロレスリング我闘雲舞の代表を務めるプロモーターでもある。小柄ながらも卓越した技術と多彩な技を駆使する技巧派として、四半世紀以上にわたり第一線で活躍。現在はアメリカ合衆国の主要団体であるオール・エリート・レスリング（AEW）にも定期参戦し、活動の舞台を世界に広げている。

キャリアの黎明期

高校時代にプロレスラーを志し、いくつかの団体のオーディションを経て、1994年にI.W.A.JAPANに入門。翌1995年8月17日、IWA・JAPAN富山大会で本名の元川恵美としてデビューを飾る。同期には松田慶三、佐藤孝至らがいる。当時のIWA・JAPAN女子部は選手が少なく、事実上、同期の市来貴代子選手との対戦が常であった。コーチも不在という環境下で、必ずしも洗練された試合内容とは言えなかったが、1996年6月には市来選手から初勝利を挙げる。その後は後輩選手との対戦も増え、主流とは異なる立ち位置で活動を続け、その独特なスタイルから「カルトヒロイン」の異名を取る。同年10月にはJWPのリングに初参戦し、全日本ジュニア王座に挑戦するも敗れた。

1997年8月にはIWA・JAPANでAWF世界女子王座を獲得し、キャリア初のタイトルを手にする。全日本女子プロレスの経営難による選手不足から、IWA・JAPANに所属したまま全女の興行に助っ人として帯同することになる。これにより試合数が大幅に増加し、それまで対戦機会のなかったトップ選手や、後にライバルとなる中西百重、坂井澄江といった若手との対戦・タッグを通じて、試合運びなどを学ぶ貴重な経験を積み、飛躍的にレベルアップを遂げる。特に高橋奈苗選手との出会いは、その後のプロレス人生に大きな影響を与えることとなる。

1998年1月には中西百重選手から全日本シングル王座を奪取。しかし、気胸で欠場し、復帰後しばらくはフェイスペイントを施した「黒猫」ギミックを使用する。

団体移籍と試練

1999年3月にIWA・JAPANを退団しフリー期間を経て、同年6月にFMWへ入団する。入団当初は女子選手も在籍していたが、団体の経営悪化に伴い女子選手の離脱が続き、他団体との交流も途絶えた末期には、男子選手とのミックスドマッチや、性転換ギミックの選手との試合が多くなるという特殊な状況下でのファイトを強いられた。しかし、この時期にテクニシャンとしての評価を確立する。2001年にはアルシオン後楽園大会でGAMI選手と対戦し、敗れはしたが「千の技を持つ女」の称号を譲り受けた。しかし、試合中に頸椎ヘルニアを発症し、手術のため長期欠場を余儀なくされる。この入院中に差し入れられたサクラエビの佃煮に感動し、後のリングネーム「さくらえみ」の由来となる。また、同じ病院にはFMWの先輩であるハヤブサ選手も頸椎損傷で入院しており、共に治療・リハビリを行った。

団体設立とプロモーター活動

2002年にFMWが倒産し、再びフリーとなったさくらえみは、レスラー活動と並行して、女子プロレス教室や子供向けの「アクション体操」教室を開講。この活動の中から、後のプロレスラーとなる里歩選手や聖菜選手らを輩出する。同年、プロレス団体「我闘姑娘」を設立し、レスラーとしても復帰を果たす。2003年にはリングネームを「さくらえみ」に改名。2004年10月には我闘姑娘の旗揚げ戦を行った。

2006年11月には、我闘姑娘から自身が旗揚げに関わったアイスリボンへ代表として移籍する。アイスリボン代表として興行を牽引する傍ら、NEO女子プロレスにも定期参戦し、田村欣子選手とのタッグでNEO認定タッグ王座を獲得するなど、NEOの中心選手としても活躍した。2009年1月にはアイスリボンの代表を退任するが、同年はNEO統一二冠王座やJWPタッグ二冠、ICE×60王座など、複数の団体でタイトルを獲得する活躍を見せ、東京スポーツ主催のプロレス大賞で6年ぶりとなる「女子プロレス大賞」を受賞した。

挑戦と海外へ

アイスリボン時代には、無観客の配信マッチである「19時女子プロレス」で高橋奈苗選手と対戦するなど、新たな試みにも積極的に関わる。また、敗者髪切りマッチで米山香織選手に敗れて丸坊主になったり、仙女との対抗戦を提起するなど、話題作りにも長けた。自ら主役を張る以上に若手の育成に注力する姿勢を見せる一方、若手の前に立ちはだかるべき局面では、その実力と厳しさをもって指導にあたった。

2012年1月、一身上の都合でアイスリボンを退団。その後の去就は未定とされていたが、同年2月頃からタイに渡航し、プロレスの普及活動を開始する。同年4月にはJWPで米山香織選手との「コントラ・タイ行きマッチ」に勝利し、米山選手と共にタイで活動することが決定。バンコクを拠点とするプロレス団体「我闘雲舞（Gatoh Move Pro Wrestling）」の設立を発表し、同年9月に正式に旗揚げする。日本でも定期的な興行「Gatoh-Move Japan Tour」を行い、タイと日本を行き来しながら団体の運営と選手育成に尽力する。

多様なリングでの活躍と現在

我闘雲舞の活動と並行し、JWP、WAVE、HEAT UP、大日本プロレス、スターダムなど、様々な団体のリングに参戦。2012年10月にはJWP認定無差別級王座を奪取し、日本人非所属選手として、また他団体所属選手としては史上初の快挙を成し遂げた。同年11月にはイギリス遠征でPro-Wrestling: EVE王座も獲得し、二冠王となる。

2015年にはデビュー20周年を迎え、記念試合を行った。2016年には久々にアイスリボンに参戦し、藤本つかさ選手や中島安里紗選手と対戦した。2020年には配信特化型団体「チョコプロ」を旗揚げし、コロナ禍における新たなプロレスの形を模索。2021年からはアメリカ・フロリダ州に活動拠点を移し、オール・エリート・レスリング（AEW）に定期参戦を開始。2022年にはアメリカのDPW女子世界王座を獲得するなど、その活動はとどまるところを知らない。

人物・スタイル

さくらえみは小柄ながらも、多彩な技と卓越したレスリング技術、そしてコミカルなムーブも織り交ぜる独自のファイトスタイルで、多くのファンを魅了してきた。SNSを活動の基盤とするなど、インターネットを積極的に活用したプロモーターとしても知られる。また、趣味は映画鑑賞や作詞作曲であり、近年は映画『ボヘミアン・ラプソディ』に影響を受け、クイーンをテーマにしたコスチュームや入場曲を取り入れている。小学校時代の同級生にお笑い芸人のまちゃまちゃがいるというエピソードも持つ。

得意技

さくらえみの得意技は多岐にわたるが、特にフィニッシュホールドとして愛用するのはラ・マヒストラルである。他にも、ロメロスペシャル（カベルナリアに移行する場合も）、自身の体重を叫びながら放つさくらえみ70kg、独特の形の逆片エビ固めであるさくらえび固めやトラブルクラッチ、コミカルな熟女式グラビア固めなどを使用する。投げ技ではアイスドライバー（AEWではQueen's Gambit）、フラワーランチ、タイガードライバーなど。飛び技では、2階からのニャンニャンプレス、ファイアーバードスプラッシュ、ムーンサルトプレス、クリオネ（AEWではロイヤルコイン）など、様々な角度からの空中殺法も得意とする。過去には危険なため封印したえみちゃんスープレックスや、連携技の百均ドライバー、米山香織選手との連携連射式ムーンサルトプレスなども使用していた。

主なタイトル歴

AWF世界女子王座
全日本シングル王座
アイアンマンヘビーメタル級王座（複数回）
NEO認定タッグ王座
NWAパシフィック女子&NEO認定シングル王座
JWP認定タッグ&デイリースポーツ認定女子タッグ王座（複数回）
インターナショナルリボンタッグ王座（複数回）
ICE×60王座（複数回）
JWP認定無差別級王座
IWA三冠統一王座（複数回）
アジアドリームタッグ王座（複数回）
スーパーアジア王座
Pro-Wrestling: EVE王座
DPW女子世界王座

その他、2009年には東京スポーツの女子プロレス大賞を受賞している。

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