Id TECH5

id Tech 5：テクスチャ制限を打破した革新的ゲームエンジン

id Tech 5は、アメリカのゲーム開発会社id Softwareが2007年に発表した3Dゲームエンジンです。同社にとって5世代目のエンジンにあたり、従来のPCゲームだけでなく、Xbox 360、プレイステーション3、Mac OS Xといった多様なプラットフォームに対応した点が大きな特徴です。

最大の特徴：テクスチャ容量制限の撤廃

id Tech 5の最も注目すべき点は、3D空間で使用するテクスチャ容量の上限を撤廃したことです。従来の3Dゲームでは、テクスチャデータがVRAMやメインメモリの容量に制約され、同じテクスチャを使い回す必要がありました。そのため、3D空間内に不自然な繰り返しや既視感が生じ、リアリティを損なう要因となっていました。

id Tech 5は、この制限を完全に撤廃することで、画面に表示される3D空間の全てのピクセルを、完全にオリジナルのデータで構成することを可能にしました。これにより、3D空間の描画は、写真や絵画のように自然でリアルなものとなり、プレイヤーの行動に合わせてテクスチャをピクセル単位で変化させるなど、従来のエンジンでは不可能だった表現も実現しました。WWDC2007で公開された技術デモでは、約20GBものテクスチャデータが使用され、その革新的な性能を実証しました。

ライセンスについて

当初、技術ディレクターのジョン・カーマックは、従来の同社製エンジン同様にオープンソースで公開する意向を示していました。しかし、QuakeCon2010でCEOのトッド・ホーレンシードは、id Tech 5のライセンスをZeniMax Mediaの開発者か、同社をパブリッシャーとする他社に限定することを発表しました。id Software以外の開発会社がid Tech 5を採用した最初のタイトルは、2014年にZeniMax系列のMachineGamesからリリースされた『Wolfenstein: The New Order』です。

採用タイトル：RAGE

id Tech 5は、id Softwareが開発した新作タイトル『RAGE』のゲームエンジンとして採用されています。『RAGE』は、同社の過去のヒット作である『DOOM』や『Quake』のフランチャイズではなく、完全新作として開発されました。また、id Tech 5は、同社のゲームエンジンビジネスの目玉として、他の開発会社にもライセンスされることが期待されています。

id Software ゲームエンジンの歴史

id Softwareは、過去に数々の革新的なゲームエンジンを開発してきました。以下にその歴史をまとめます。

初代：DOOMエンジン (id Tech)
2代目：Quakeエンジン (id Tech 2)
3代目：Quake3エンジン (id Tech 3)
4代目：DOOM3エンジン (id Tech 4)

id Tech 5は、これらのエンジンの進化の集大成であり、ゲーム業界における3D表現の新たな可能性を切り開いたと言えるでしょう。

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