Il-112 (航空機)

Il-112輸送機の概要

Il-112は、イリューシン設計局が開発したロシア製の輸送機であり、An-26およびAn-24の後継機として位置づけられています。主にロシア軍の軽量軍用輸送機としての需要に応える設計がなされており、民間向けの貨物輸送機型Il-112Tも存在します。

開発の経緯

Il-112の開発は1990年代の前半に始まりました。当初はイリューシンの内部資金によって推進され、An-26の後継機としての民間型の設計が行われましたが、経済危機の影響で一時的に開発が停止されました。その後、2004年にはロシア国防省が軽量軍用輸送機の設計コンペにおいてIl-112Vを選定し、開発が再開されました。

しかし、その後も開発は数度の遅延に見舞われ、技術的な問題や資金不足により、2011年には一度正式に開発が凍結されます。その後、2012年には再び開発が見直され、アビオニクスやエンジンの選定が進められました。

設計と性能

Il-112の設計は、イリューシンのIl-114を基本にしており、胴体の長さは短縮され、高翼配置が採用されています。主翼は初めてモノリシック構造が使用され、これにより耐久性とパフォーマンスが向上しました。空力的な設計だけでなく、機体の運用においても、非舗装の飛行場への適応能力が考慮されています。

貨物室は広く設計されており、UAZ-452クラスの車両や最大50人の人員、また25人の兵士が装備品とともに積載可能です。エンジンには高効率なTV7-117STが用意され、従来型と比較して大幅に燃料効率が向上しています。

製造と運用

Il-112の生産には、ロシア内で多くの企業が関与しており、製造の約85%はヴォロネジ航空機製造合同（VASO）によって行われます。年間8〜12機の生産が計画されており、2030年までに200機が需要されるとの見通しもあります。

ロシア国内では、国防省や緊急事態省など多くの機関からの需要が見込まれています。また、インドやウルグアイなど海外からの関心も寄せられています。不幸にも、2021年には試作機が墜落する事故が発生し、搭乗者全員が亡くなるという悲劇もありました。

まとめ

Il-112は、ロシア航空界における重要な輸送機として期待されており、多様なミッションをこなす能力を持っています。開発の遅延はあったものの、最終的には性能的にも運用的にも優れた航空機へと仕上がることが期待されています。今後の運用や他国への供給がどのように進展するのか、注目が集まります。

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