Il-20 (航空機・初代)

イリューシン Il-20: 重武装地上攻撃機の試作機

イリューシン Il-20（Ilyushin Il-20）は、ソビエト連邦が開発した地上攻撃機の一つで、イリューシン Il-10の後継機として位置付けられました。この機体は、試作段階である1948年から1949年にかけてテストが行われたものの、様々な問題に直面し、量産には至りませんでした。

開発の背景

1947年、セルゲイ・イリューシンは、より高い性能と火力を持つ航空機の開発要求に応じて、新しい機体の設計を開始しました。この設計の特徴的な部分は、プロペラの直後に配置されたコックピットです。この構造は、パイロットが360度の視界を持つことを可能にし、特に地上目標を確認する上での利点がありました。

構造と機能

Il-20は、全金属製の低翼単葉機体で、出力3,000 hpの新開発のM-47液冷エンジンを搭載していました。また、機関砲は特に注目される点で、主翼には23 mm機関砲が2門、胴体には地上掃射のために23°下向きに調整可能な機関砲が2門装備されていました。これにより、地上攻撃における効果的な火力を発揮することができました。

防御機能

Il-20は、乗員と重要機器の防護を意識した設計がなされており、各部には応力負担装甲が施されていました。キャノピー部分には攻撃に耐えるための防弾ガラスが使用されるなど、構造的な安全性が重視されていました。

武装の多様性

試作機に対しては、幅広い武装のオプションが検討されました。その中には、標準的に400 kgの爆弾を搭載できる機能も含まれており、最大で1,190 kgの爆弾を搭載することも可能でした。また、RS-132ロケット弾など、多様な攻撃手段の選択肢を模索することも行われました。

テストと課題

Il-20は1948年11月27日に完成し、初飛行は翌月の12月4日でしたが、テスト結果は必ずしも良好ではありませんでした。この機体の最高速度は515 km/hで、従来のIl-10よりも36 km/h遅かったことが明らかになり、これらの要因は主にコックピット配置による抗力および新エンジンの振動が原因とされました。

また、空軍の武装への不満や、コックピットの整備性の悪さなども問題視され、これが計画全体に影響を及ぼしました。特に、エンジン上部に配置されたコックピットはパイロットに困難をもたらし、さらには安全性の懸念も高まる要因となりました。

開発の終焉

これらの問題の影響もあり、1949年5月14日にIl-20の開発計画は中止されることが決定されました。これにより、革新的な設計と機能を持ちつつも、商業的に実現されることはありませんでした。イリューシン Il-20は、その設計の独特さと不運な運命から、航空機開発の歴史において興味深い存在となっています。

要目

• - 乗員：2名
• - 全長：13.58 m
• - 全幅：15.43 m
• - 空虚重量：7,500 kg
• - 最大速度：515 km/h
• - 武装：23 mm機関砲×4
• - 最大爆弾搭載量：1,190 kg

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