Il-32 (航空機)

イリューシン Il-32

イリューシン Il-32は、第二次世界大戦後のソビエト連邦によって開発された軍用グライダーです。この機体は最大60名の兵員や7,000kgの貨物を輸送可能であり、特に122mm砲やその牽引トラクター、また砲弾などを運ぶ目的で設計されました。

構造と機能

Il-32は、特に貨物の積み降ろしを容易にするために特別な設計が施されています。機首部と機尾部は横ヒンジを支点として回転し、95度まで開くことができるため、大きな貨物もスムーズに取り扱うことが可能です。

このグライダーは片持ち式の高翼単葉で、首車輪式の降着装置を備えています。アルミニウム製の胴体は四角い断面形状を持ち、できる限り多くの貨物を効率的に積載できることを目的としています。2本桁の主翼に関しては、アスペクト比も考慮されており、使用の際に安定した飛行を可能にしています。

開発の経緯

1947年9月、ソ連の人民委員会議はイリューシン設計局に7,000kgの貨物を搭載できるグライダーの開発を指示しました。曳航機としては、ツポレフ Tu-4に由来する4発機のTu-75が計画されましたが、必要なエンジンの不足が影響し、計画は進展しませんでした。

Il-32は1948年8月20日に双発のイリューシン Il-12によって初飛行しましたが、必要な荷重を牽引するには力不足であり、9月には4発のIl-18がテストに導入されました。テスト飛行中、Il-32は重量16,000kg、高度3,000mで巡航速度323km/hを記録しました。その結果は良好でしたが、適当な曳航機が不足していたため、量産へ移ることはできませんでした。

曳航機の不足

計画されていたTu-75や他の4発機は供給不足によりキャンセルされ、最終的には適切な曳航機が無い状態でIl-32の開発は終了しました。実験として実施された2機のIl-12による曳航も困難で危険なものでした。

要目

• - 乗員: 60名
• - 積載量: 7,000kg (15,000 lb)
• - 全長: 24.84 m (81 ft 6 in)
• - 全幅: 35.8 m (117 ft 5 in)
• - 空虚重量: 9,600kg (21,164 lb)
• - 全備重量: 16,600kg (36,597 lb)
• - 巡航速度: 327km/h (203 mph)
• - 巡航高度: 4,000m (13,100 ft)

このように、イリューシン Il-32は兵員や装備を迅速に輸送するための野心的な試みでしたが、技術的および運用上の課題によってその計画は実現しませんでした。他の大型輸送グライダーと同様に、イリューシン Il-32はソ連の航空機開発の一部として重要な意味を持っています。

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