Il-96 (航空機)

Il-96とは

Il-96（イリューシン96）は、1980年代にソ連のイリューシン設計局によって開発された4発ワイドボディ旅客機です。これは、前モデルであるIl-86の改良型として登場しました。Il-86は初のソ連製ワイドボディ機でしたが、経済面や性能面での欠如が指摘され、その教訓を基にIl-96が開発されました。

開発の背景

Il-86は1980年代初頭に就航しましたが、航続距離やアビオニクスの性能が西側機と比較して劣っていたため、アエロフロート航空などの航空会社は更なる機体の必要性を感じていました。そのため、イリューシン設計局は新たに国際長距離路線に対応できる旅客機の開発を決定し、1988年にIl-96-300を初飛行させました。

特徴と技術

Il-96は、軽量化を図った複合材の使用や最新技術を搭載しています。具体的には、グラスコックピットやフライ・バイ・ワイヤによる機体制御、高バイパス比ターボファンエンジンが装備されています。この結果、航続距離は9000kmから13000kmに及びます。また、最大離陸重量は240トン、3クラス配置での標準座席数は235名とされています。これにより、国際線運航において競争力を持たせることを目的としていました。

生産と運用

Il-96は1993年にアエロフロート・ロシア航空で運航を開始し、その後1998年に胴体を延長したIl-96Mや貨物型のIl-96Tなども開発されました。ただし、市場競争の厳しさから、2009年には長距離旅客機としての生産中止が決定されました。以降は軍用や政府向け機の生産に特化することとなります。

政府/軍用機型

Il-96は、政府用として大統領専用機Il-96-300PUや国防大臣向けのIl-96-400VVIPが運用されています。また、空中給油機型のIl-96-400TZも開発されており、国防省はこれを2機発注しました。このように、Il-96は民間市場だけではなく、政府の安全保障面においても重要な役割を果たしています。

生産再開と最新の動向

2009年に生産が停止した後も、2015年から再開の検討が進められ、2018年には生産が再開され、2023年11月にはIl-96-400Mの初飛行が行われました。これによって、イリューシン設計局は今後の航空市場に再び挑む姿勢を示しています。

事故と安全性

Il-96は過去にあたる大きな事故は報告されていませんが、いくつかの小規模なトラブルは発生しています。バッテリーの問題などによるトラブルで、一時的に運航停止となることもありましたが、全体としての安全性は高く評価されています。

まとめ

Il-96は、技術革新と歴史的な背景を反映した旅客機として、ロシアの航空機産業の進化を象徴しています。未だに政府用としての重要な役割を担っているほか、最新のモデルが復活していることで、今後の展開にも期待が寄せられています。

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