Interface Message Processor

Interface Message Processor（IMP）は、ネットワーク間でのパケット転送を担う装置であり、現代のインターネットを支えるルータの原型にあたります。その歴史は、インターネットの黎明期であるARPANETの誕生と深く結びついています。

歴史

1960年代初頭、ポール・バランによるパケット通信の研究が始まりました。この研究成果を受け、1967年4月、ARPA（アメリカ国防高等研究計画局）が主催したARPANET Design SessionでIMPのアイデアが初めて議論されました。その後、1969年にローレンス・ロバーツやBBN社のボブ・カーンらによってIMPが開発されました。IMPのパケット転送機構はストアアンドフォワード型であり、各ルータは2秒ごとに経路情報を交換し、トランジットタイムが最小となる経路を評価する機能を備えていました。さらに、0.5秒ごとに経路表を更新する動的ルーティングアルゴリズムも実装されており、このアルゴリズムもポール・バランによって考案されたものです。

1969年のIMP発明後、NCP（Network Control Protocol）というプロトコルスタックの試作が行われました。同年の10月29日には、IMPを用いた通信実験が成功し、異なる組織のネットワークが初めて相互接続されました。この出来事はARPANETの概念を実証するものでしたが、実験当初はシステムが非常に脆弱であり、最初に送信予定だった「LOGIN」という文字列のうち、「L」と「O」を伝送し終えた時点でシステムがクラッシュするという状況でした。しかし、1970年にはNCPが実用的なレベルまで完成しました。

1983年1月1日には、NCPからTCP/IPへの移行が完了し、高機能化とスタック構造の整理が行われました。このTCP/IPの運用開始が、技術的な意味でのインターネットの始まりとされています。

また、ルーティングプロトコルも進化を遂げ、1982年にはARPANETのルーティングプロトコルがディスタンスベクタ型のGGPに移行し、1984年には同じくディスタンスベクタ型のEGPへと移行しました。1989年からは、各組織のネットワーク管理者のポリシーを反映できるパスベクタ型のBGPが採用されました。

1981年には、ARPANETに接続できない学術機関向けにCSNETが構築されました。1983年には、セキュリティ上の理由から、軍用インターネットバックボーンであるMILNETがARPANETから分離・独立しました。1985年には、新たに構築されたNSFNETの拡大に伴いARPANETは縮小し、新型ルータの導入とともにIMPの運用台数も減少していきました。そして、1990年にはNSFNETの利用拡大を理由としてARPANETが廃止され、残存していた少数のIMPは廃棄またはMILNETに移管されました。

1号機

IMPの1号機は、1969年にハネウェルのミニコンピュータDDP516をベースに開発されました。開発の中心となったのは、ARPAのローレンス・ロバーツとBBN社のボブ・カーンです。ARPANETの開発趣旨（軍事要求）により、防爆型の筐体が採用されたため、外観は金庫に似ており、外寸は大型冷蔵庫に近いものでした。

1号機は、[カリフォルニア大学ロサンゼルス校]のレナード・クラインロック教授の研究室に設置され、現在はUCLAの図書館に保存されています。

参考文献

en:Interface Message Processor

関連項目

インターネット
* ルータ

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