International Mobile Subscriber Identity

国際モバイル加入者識別番号（IMSI）

国際モバイル加入者識別番号（IMSI、イムズィと発音）は、GSMやW-CDMAなどの携帯電話ネットワークにおいて、各加入者を一意に識別するための番号です。SIMカードに格納されており、携帯電話がネットワークに接続する際に使用されます。IMSIは、加入者の位置情報やサービスに関する情報を管理するホームロケーションレジスタ（HLR）や、ローミング時の位置情報を管理するビジターロケーションレジスタ（VLR）といったデータベースと連携することで、通信の確立や認証を実現します。

IMSIの構造と役割

IMSIは通常15桁の数字列で構成されますが、国や事業者によっては異なる桁数の場合もあります。IMSIの構成要素は以下の通りです。

Mobile Country Code (MCC): 3桁の国コード。国を識別します。
Mobile Network Code (MNC): 2桁または3桁の事業者コード。国内の携帯電話事業者を識別します。北米では3桁、ヨーロッパや日本では2桁であることが多いです。
* Mobile Station Identification Number (MSIN): 加入者を識別する番号。MCCとMNCを除いた残りの桁数が該当します。

IMSIは、ITUのE.212番号規格に準拠しています。この番号は、世界中の携帯電話ネットワークで共通して使用されており、国際ローミングにおいても重要な役割を果たします。セキュリティ上の理由から、IMSIは直接ネットワークに送信されることは少なく、代わりに一時的な番号（Temporary Mobile Subscriber Identity：TMSI）が使用されます。

IMSI分析と国際ローミング

IMSI分析とは、IMSIから加入者の所属するネットワークを特定し、ローミングの可否を判断するプロセスです。加入者が自国のネットワーク以外に接続する場合（国際ローミング）、IMSIはGlobal Titleと呼ばれる形式に変換される必要があります。Global Titleに変換することで、リモートのHLRにアクセスし、加入者の情報を取得することが可能になります。

Global Titleへの変換方法は、地域によって異なります。北米以外では、ITUのE.214規格に基づいて変換が行われます。E.214規格は、IMSIを国際SS7ネットワークでルーティング可能な番号に変換する方法を規定していますが、実際には、より効率的な変換方法が用いられることが多いです。北米では、IMSIをE.212番号に直接変換し、SS7ネットワークでそのまま使用します。

具体的な変換例を挙げると、ある国のIMSIが`284011234567890`の場合、北米以外では、まずMCCとMNC（この例ではブルガリアのMobilTel）を特定し、次にブルガリアの国番号とMobilTelのネットワークコードを付加することで、`359881234567890`といったGlobal Titleに変換されます。一方、北米では、このIMSIはそのままE.212番号として使用されます。

Home Network Identity (HNI)

MCCとMNCを組み合わせた番号をHome Network Identity (HNI)と呼びます。HNIは、加入者が本来属するネットワークを明確に特定するために使用されます。これは、ある国が複数のMCCを持っている場合（例えばアメリカ）があるため、MNCだけではネットワークを一意に特定できないためです。

Global Title変換の課題

Global Title変換においては、複数のMCCを持つ国や、国際電話番号の国番号を共有する国（例えば北米）の存在が課題となります。E.214規格は、これらの状況を考慮していないため、変換処理において曖昧さが発生する可能性があります。特に、Global Titleの国コード部分が1の場合、アメリカ、カナダ、西インド諸島などの複数の国を識別する必要があります。そのため、実際には、各事業者は独自の変換処理を工夫して、正確なネットワークを特定しています。

まとめ

IMSIは、携帯電話ネットワークにおける加入者識別において重要な役割を果たす番号です。その構造、役割、そして国際ローミングにおける変換処理を理解することは、携帯電話ネットワークの仕組みを理解する上で不可欠です。IMSIは、加入者情報を保護するために、通信中にはTMSIに置き換えられるなど、セキュリティ対策も考慮されています。今後、ネットワーク技術の進化に伴い、IMSIの役割や管理方法も変化していく可能性があります。

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