JC.COM

JC.COM：集英社の意欲作、短命に終わったアンソロジーコミック

2008年12月19日から2010年10月20日まで、集英社より発行されていた隔月刊アンソロジーコミック『JC.COM』。サブタイトルは「COMIC,COMMUNICATION,COMRADE.」と、多様な意味合いを含む言葉が用いられていました。全12号という短い期間での刊行ながら、その存在感は、多くの読者やクリエイターに記憶されています。

『JC.COM』は、集英社の愛蔵版コミックスレーベルから発行されており、通常の単行本と同様の装丁がなされていました。しかし、その内容は全て書き下ろしのオリジナル作品で構成されており、漫画雑誌に近い性質を持っていました。掲載された作品の中には、単行本化されたものも多く存在し、それらも同様に愛蔵版コミックスレーベルから発売されました。作品クオリティの高さを重視するレーベルの姿勢がうかがえます。

編集体制は当初、デザイン、入稿、校了以外の作業をほぼ一人で担う、実質一人体制で運営されていましたが、第5号からは二人体制へと移行しました。これは、発行部数増加や作品数の増加など、業務量の増加に対応するための措置だったと考えられます。一人体制では抱えきれないほどの仕事量だったことが伺えます。

掲載作品は漫画作品が中心でしたが、コラムも掲載されていました。特に注目すべきは、田埜哲文氏によるコラム「ROOTS探検隊」です。第1号から第9号まで連載され、作品に関連する様々な話題を提供していたと考えられます。また、全号を通して村田蓮爾氏が表紙イラストを担当しており、独特の世界観を持つ彼のイラストは、雑誌全体の雰囲気を決定づける上で大きな役割を果たしていたと言えるでしょう。村田蓮爾氏のイラストは、多くのファンを魅了し、『JC.COM』のアイコニックな存在として記憶されています。

『JC.COM』は、短期間での刊行に終わってしまいましたが、そのクオリティの高さと、個性豊かな作品群、そして独特の編集方針は、多くの読者に強い印象を残しました。多くの漫画家やクリエイターにとって、作品発表の場として、また、自身の創作活動の幅を広げる貴重な経験の場を提供したのではないでしょうか。アンソロジーコミックという形式を生かし、多様な作品を掲載することで、漫画表現の可能性を広げる実験的な試みでもあったと言えます。商業誌の枠を超えた自由な表現を試みる姿勢は、多くの読者や関係者に影響を与えたことでしょう。

もし『JC.COM』が継続されていたなら、どのような作品が掲載され、どのような展開になっていたのか想像すると興味深いですね。短い期間ながらも、多くの記憶に残る作品を生み出した『JC.COM』は、日本の漫画史において、特異かつ重要な位置を占める存在と言えるでしょう。その存在は、アンソロジーコミックの可能性を示唆するとともに、クリエイターたちの挑戦と情熱の証でもあります。

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