JHMCS

JHMCS（Joint Helmet Mounted Cueing System）

JHMCS（Joint Helmet Mounted Cueing System、通称ジェイヘミクス）は、戦闘機に搭載されるヘッドマウントディスプレイであり、主にアメリカ空軍、海軍、海兵隊をはじめ、航空自衛隊など、20カ国以上で使用されています。VSI社が開発したこのシステムは、高度な戦闘能力を提供することを目的として設計されています。

開発の背景と経緯

JHMCSの原型は、1993年に始まったVista Sabre IIプロジェクトから派生しました。この最初の計画では、カイザーエレクトロニクスが試作機を製作し、F-15戦闘機で試験を行いましたが、高G環境下での問題が指摘され、次にVCATS（Visually Coupled Acquisition and Targeting System）の開発が進められました。このVCATSはJHMCSとVista Sabre IIを結びつけるための重要な役割を果たしました。

1996年に契約が締結され、1997年に本格的な開発が開始されました。開発競争には、エルビット社とカイザーエレクトロニクスの合弁会社および、GECマルコーニとハネウェルのチームが参加し、様々な提案がなされました。最終的にはVSI社が選ばれ、1999年には初期テストが成功裏に終了し、正式な生産は2003年から始まりました。

画期的な設計

JHMCSの最大の特徴は、パイロットが機体のHUD（ヘッドアップディスプレイ）内に敵機を正面で捉えなくても、ミサイルのロックオンが可能である点です。具体的には、敵機の位置が顔を向けるだけで捉えることができ、ミサイルシステムと火器管制装置が連携することにより、視覚的に敵機を追尾できます。この技術により、パイロットは視野の広がりを確保しつつも、敵に対して迅速に攻撃を実施することができます。

JHMCSは、既存のヘルメット（HGU-55/Pなど）にアダプターを介して取り付ける形式を採っており、夜間における戦闘にも対応が可能です。ただし、ヘルメットは各パイロット専用に製作されるため、共用はできません。取り扱うことのできるミサイルには、AIM-9XサイドワインダーやIRIS-Tなどがあります。

日本においても、F-15J近代化改修機にJHMCSを搭載することで、国産空対空誘導弾AAM-5のオフボアサイト能力を向上させています。

JHMCS IIの改良

JHMCSの改良版、JHMCS IIが2014年に登場しました。この改良型では、未だにCRTディスプレイを使用していたものが、800×600の液晶ディスプレイに置き換えられ、全カラー表示が可能になりました。システムは小型化され、ケーブル類の取り回しが楽になり、メンテナンス性も大幅に向上しています。新たに追加された機能には、昼夜の切り替えや、パイロットの健康状態を監視するCanary機能が含まれています。

JHMCS IIには、JHMCS II/M（デジタルJHMCS）とJHMCS II/Hの2種類があり、定型化された設計が施されています。JHMCS II/Hはジャイロと光学式の感知方式を採用し、軽量化や冷却の必要がなく、機体との接続方法が刷新されています。

結論

JHMCSとその改良型は、航空戦におけるパイロットの操作性と効率を大幅に向上させるために、革新的な技術を提供しています。将来的には、さらなる改良や新機能の追加に期待が寄せられています。これらの技術は、勝利の手段としての戦闘機の潜在能力を引き上げ、国際的にも競争力を維持する要因となるでしょう。

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