JRシリーズ (エンジン)

JRシリーズ: 日本のリフトジェットエンジンの歴史

JRシリーズは、航空宇宙技術研究所におけるV/STOL（垂直/短距離離着陸）機に関連する研究の中で開発されたリフトジェットエンジンです。このエンジンは、主に石川島播磨重工業株式会社（現在の株式会社IHI）によって製作されました。

開発の背景

航空宇宙技術研究所は、VTOL機に必要なジェットリフト技術を追求し、初のVTOL機である「VTOL実験機フライングテストベッド」を開発しました。この機体は、技術研究の成果を反映したもので、富士重工業が設計・製作を手掛けました。昭和38年度から開始されたJR100の試作研究は、推力重量比10のリフトジェットエンジンを早期に実現することを目指しました。

昭和39年には、より高出力を目指したJR200の開発もスタートし、JR100とJR200の試作研究が並行して進められました。JR100は、昭和39年9月末に製作が完了し、昭和40年7月に運転試験を終え、後にリフトジェットエンジンの高度制御研究用のJR100Hと、フライングテストベッド用のJR100Fがそれぞれ製作されました。

JR200は昭和41年8月に試作が完了し、運転試験を実施しましたが、信頼性向上を図ったJR220の開発は試作段階で終了しました。これらのエンジンには、燃費や騒音の観点からもリフトファンの技術が考慮されていました。

JR100シリーズの詳細

JR100

JR100は、早期に実機を完成させるために、既存のデータや材料を活用し、軽量かつ高出力を実現することに焦点が当てられました。圧縮空気を抽気するJR100Fと、しないJR100Hの2つのバリエーションがあります。主な諸元は以下の通りです。

• - 圧縮機: 軸流6段
• - 燃焼器: アニュラー型燃焼器
• - タービン: 軸流1段
• - 全圧力比: 3.9
• - タービン最高入口温度: 850°C
• - 推力: 1530 kgf（抽気なし）
• - 長さ: 1090 mm
• - 幅: 660 mm
• - 高さ: 700 mm
• - 重量: 155.0 kg

JR200

JR200は、JR100の構造を基に、材料を軽量化するとともに圧縮機の段数を5段に減少させ、高出力化を図りました。JR200の主な諸元は以下の通りです。

• - 圧縮機: 軸流5段
• - 燃焼器: アニュラー型燃焼器
• - タービン: 軸流1段
• - 全圧力比: 4.0
• - タービン最高入口温度: 850°C
• - 推力: 2180 kgf（抽気なし）
• - 重量: 127.0 kg

JR220

JR220は、さらに信頼性向上を図ったエンジンで、圧縮機を6段に増やし、チタン合金を多く使用しました。JR220の主な諸元は次の通りです。

• - 圧縮機: 軸流6段
• - 燃焼器: アニュラー型燃焼器
• - タービン: 軸流1段
• - 全圧力比: 4.4
• - タービン最高入口温度: 950°C
• - 推力: 2280 kgf（抽気なし）
• - 長さ: 1250 mm
• - 幅: 700 mm
• - 高さ: 700 mm
• - 重量: 156.8 kg

参考資料

• - 松木正勝 「国産ジェットエンジンの開発」『日本ガスタービン学会誌』
• - 松木正勝 「新型ジェットエンジンの研究開発」『日本機械学會誌』
• - 島崎忠雄 宮沢清人 「リフトジェットエンジンの試作研究について」『生産技術』

このように、JRシリーズは日本の航空宇宙技術の革新を体現する重要なエンジンであり、その歴史と技術の発展は今も多くの航空ファンや技術者に影響を与えています。

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