JR貨物コキ72形貨車

JR貨物コキ72形貨車について

JR貨物コキ72形貨車は、1996年に日本貨物鉄道（JR貨物）が製造した海上コンテナ輸送用の貨車です。コキ100系コンテナ車による海上コンテナ輸送が拡大する中、より大型で重量のあるコンテナ輸送の需要に応えるために開発されました。

開発の背景

1993年以降の規制緩和により、大型コンテナの道路輸送が可能になったことを受け、JR貨物では、既存の車両では輸送が難しかった大型重量コンテナに対応できる新型コンテナ車の開発が急務となりました。そこで開発されたのが、このコキ72形です。

車両の特徴

コキ72形は、JR貨物で初めて総重量24tのISO20ftコンテナ積載に対応した貨車です。多様な海上コンテナやJRコンテナを効率的に輸送できるよう、低床構造を採用しています。試作車として1両（コキ72-901）のみが川崎重工業で製造されました。

構造

台枠: 床面高さを740mmとする低床平床構造で、高さ9ft6inの背高コンテナを積載できます。両側のデッキ部分は一般的なコンテナ車と同じ高さに設計されています。全長は16,000mmで、外観はコンテナレッド（赤紫）で塗装されています。
積載能力: 荷重は48tで、ISO規格20ft海上コンテナ（総重量24t）を2個積載可能です。その他、JR20ft・ISO20ft (20.3t)コンテナを2個、JR30ft・ISO40ftコンテナを1個積載できます。
緊締装置: コンテナの固定には、線路方向にスライドして収納する方式を採用しています。当初はJR12ftコンテナ用の緊締装置はありませんでしたが、後に専用の装置が取り付けられ、JR12ftコンテナを3個積載できるようになりました。
台車: 車輪径を610mmに小型化したFT15形台車を使用しています。これは、コキ70形に用いられたFT11形を基本とし、シェブロンゴム支持の軸箱装置とボルスタレス式空気ばねを装備した構造で、固定軸距は2,000mmに拡大されています。空気ばねは重荷重に対応するため大型化されています。
ブレーキ装置: コキ71形と同様のCLE方式（応荷重式電磁自動空気ブレーキ）を採用しています。コキ70形で試用された滑走防止装置は搭載されていません。

運用とその後

コキ72形は、主に横浜本牧 - 宇都宮貨物ターミナル間での海上コンテナ輸送に運用されました。しかし、その後の建築限界調査で、高さ9ft6inの背高コンテナ輸送に必ずしも低床車両が必要ないことが判明しました。そのため、製造・保守コストの高いコキ72形は量産には至らず、試作車1両のみの製造で終了しました。

その後、海上コンテナ積載に対応しつつコストを抑えたコキ106形や、コキ100系と同等の床面高さ1,000mmでありながらコキ72形とほぼ同等の積載能力を持つコキ200形が開発され、コキ72形は運用を終了しました。試作車はJR貨物稲沢駅構内に留置されていましたが、2021年8月下旬に解体され、現存しません。

まとめ

コキ72形は、大型コンテナ輸送の需要に応えるために開発された画期的な貨車でしたが、コスト面から量産には至りませんでした。しかし、その技術と経験は、後の貨車開発に活かされています。


参考文献

電気車研究会『鉄道ピクトリアル』2000年1月号 No.680 特集：貨物輸送
鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』2001年3月号 No.413 特集：機関車牽引列車の現状
『日本の貨車-技術発達史-』（貨車技術発達史編纂委員会編著、社団法人 日本鉄道車輌工業会刊、2008年）

関連項目

* JR貨物の車両形式

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