Jaguar (コンピュータ)

Jaguar (スーパーコンピュータ)

スーパーコンピュータ『Jaguar（ジャガー）』は、米国テネシー州にあるオークリッジ国立研究所に設置された高性能計算機システムです。このシステムは、スーパーコンピュータ分野で長年の実績を持つクレイ社によって開発および製造されました。科学技術計算や気候変動モデリング、核融合研究など、多岐にわたる分野での大規模なシミュレーションやデータ解析に用いられました。

システム概要と初期評価

Jaguarは、毎秒1000兆回（1ペタFLOPS）を超える浮動小数点演算が可能な「ペタスケール」級の計算能力を目指して設計されました。システムは2008年に稼働を開始し、その年の11月に発表された世界のスーパーコンピュータ性能ランキング「TOP500」では、当時の最新鋭システムとして第2位にランクインしました。

ハードウェア基盤としては、クレイ社の高性能計算プラットフォームであるCray XT5アーキテクチャをベースとして構築されています。初期段階から膨大な数の計算ノードとプロセッサを搭載していましたが、さらなる性能向上を目指し、その後の数年間で段階的なアップグレードが実施されました。

性能向上と世界最速へ

2008年11月に2位となった後、オークリッジ国立研究所とクレイ社は、Jaguarのシステムを大幅に強化するプロジェクトを進めました。このアップグレードでは、システムの計算ノード数が大幅に増加されたほか、主要な計算能力を担う中央演算処理装置（CPU）として、AMD Opteronプロセッサの最新世代への換装が行われました。これらの改良により、Jaguarは飛躍的に計算性能を高めることに成功しました。

これらの努力が結実したのが、翌年の2009年11月に発表されたTOP500リストです。Jaguarは、ピーク性能において1.75ペタFLOPS（毎秒1750兆回の演算）を超える数値を達成し、それまで首位であったシステムを抜いて、遂に世界最速のスーパーコンピュータの座を獲得しました。これは、当時の科学技術計算分野における画期的な成果として注目されました。

技術的な詳細

世界最速を達成した時点でのJaguarシステムは、合計で22万個をはるかに超える（具体的には224,256個）AMD Opteronプロセッサコアを搭載していました。これらの多数のプロセッサコアが並列に連携することで、非常に複雑な計算タスクを高速に処理することが可能となります。システムの運用全体を管理するオペレーティングシステムとしては、高性能計算分野で広く採用されているLinuxディストリビューションの一つが使用されていました。この強固なシステム構成により、Jaguarは多岐にわたる最先端の研究分野で貢献を果たしました。

Jaguarは、ペタスケール時代の幕開けを象徴するスーパーコンピュータの一つとして、その後の高性能計算システムの開発に大きな影響を与えました。その性能と規模は、科学技術の進歩に不可欠な計算リソースを提供し、多くの重要な発見やシミュレーション研究を可能にしました。

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