Jewel -Vocal Version-

jewel -Vocal Version-

『jewel -Vocal Version-』（ジュエル ボーカルバージョン）は、日本の伝説的シンガーソングライター、尾崎豊が2001年10月5日にマインドスケープよりリリースしたコンピレーション・アルバムです。

アルバムのコンセプトと特徴

本作は、尾崎がまだプロデビューする以前の時期に録音された、非常に貴重な未発表音源を核として構成されています。これらのデモ音源に対し、後年になって新たにスタジオでバンドサウンドを重ねてアレンジするという手法が取られており、リリース当時の新たな息吹を吹き込まれた形で世に出されました。

そしてこのアルバムの大きな特徴の一つが、全9トラックのうち、最後に配された「シェリー（ライブ＆メッセージ）」です。これは、尾崎のキャリア初の公式なライブ活動である「LIVE HOUSE APPEARANCE」の中から、新宿ルイードで行われた公演の模様を収めたライブ音源であり、通称「幻のルイードライブ」としてファンに語り継がれています。

収録音源の詳細

アルバムの中核を成すのは、1982年10月11日に開催されたCBS・ソニー主催のオーディション、「CBS SONY Sound Development Audition 1982」（通称SDオーディション）にて、尾崎自身が弾き語りなどで歌唱したデモテープの音源です。この時の素材を基に、後からバック演奏が追加されています。

収録されている楽曲には、後に形を変えて発表されたものも含まれます。

「町の風景」：後に1stアルバム『十七歳の地図』（1983年）に「街の風景」と改題されて収録されましたが、本作に収められたバージョンとは歌詞が異なります。
「ダンスホール」：後に2ndアルバム『回帰線』（1985年）に収録されましたが、こちらも本作バージョンとは歌詞が異なっています。
「野良犬の道 (Street Blues)」：後にリリースされた2ndシングル「十七歳の地図」（1984年）の原曲にあたります。

これらの初期音源からは、後の尾崎の楽曲に通じるメロディやテーマの萌芽、そして瑞々しい感性が感じ取れます。加えて、このオーディション音源からは「もうおまえしか見えない」といった楽曲も収録されており、尾崎のデビュー前夜の音楽的探求の様子を垣間見ることができます。

「シェリー（ライブ＆メッセージ）」について

本作の大きな聴きどころである「シェリー（ライブ＆メッセージ）」は、前述の通り、尾崎が初めて公式なステージに立った「LIVE HOUSE APPEARANCE」シリーズより、新宿ルイード公演の記録です。このライブ音源は、後に1996年にリリースされたライブ・ビデオ『OZAKI・18』に収録されている同会場でのライブとは、別日の収録であることが確認されています。

このトラックの最大の特長は、「シェリー」の演奏が始まる直前に、ファンに向けた尾崎自身の肉声によるメッセージが収録されている点です。これは当時未公開であった音声であり、聴き手に強い感動と印象を与える要素となっています。

関連情報

本作に収録されているオーディションを基にした音源は、翌年の2002年にリリースされた別のコンピレーション・アルバム『SEPIA』にも同一のものが収められています。

スタッフ・クレジット

CDブックレットに記載されたクレジットによると、本作の主要スタッフは以下の通りです。

歌、演奏：尾崎豊
写真提供：横山正美
アート・ディレクション、デザイン：James Hido
エグゼクティブ・プロデューサー：Shu Takeda
スペシャル・サンクス：Hiro Yoshida

『jewel -Vocal Version-』は、尾崎豊の初期の衝動と才能、そして未発表の貴重な音源に触れることができる、ファンにとって見逃せない作品と言えるでしょう。

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