K1 (戦車)

K1戦車：韓国軍の主力戦車

K1戦車は、アメリカのクライスラー社（現ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ）の設計を基に、韓国のヒュンダイロテム社で製造・近代化改修が行われた韓国軍の主力戦車です。2020年代初頭にK2戦車が戦力化された現在も、韓国軍の中核的な装甲戦力として重要な役割を担っています。

概要

K1戦車は、クライスラー社が開発したM1エイブラムスの設計を色濃く受け継いでいますが、山岳地帯での戦闘を想定して軽量化と機動性の向上が図られています。また、油気圧式のHSUとトーションバーを組み合わせたハイブリッドサスペンションを採用することで姿勢制御機能を高め、高俯仰角を得ることで、起伏の激しい地形でのハルダウン射撃や、高所に対する高仰角射撃を可能にしています。

シリーズの原型であるK1は、FCS制御の105mmライフル砲や初期型の複合装甲を装備するなど、初期型M1エイブラムスに準じた第3世代戦車としての特徴を備えています。その後、近代化改修によって主砲口径の増大、複合装甲の換装、C4I機能の強化などが実施されました。

K1シリーズの総生産数は1,500両を超え、約2,200両の韓国軍保有戦車の半分以上を占める主力戦力となっています。

設計

火力

主砲
K1/K1E1：K68 51口径105mmライフル砲
K1A1/A2：KM256 44口径120mm滑腔砲（有効射程約2000m）

いずれもNATOの代表的な105mm砲、120mm砲をライセンス生産したもので、自動装填装置は搭載されておらず、装填手による手動装填となります。

車長用潜望鏡
K1：フランスSFIM社（現サフラングループ）製VS-580
K1E1：KCPSのサーマルセンサーを第3世代型に改良したKCPSA1
K1A1/A2：SAMSUNG THALES（現Hanwha Systems）製KCPS（第2世代型サーマルセンサー搭載、360度旋回可能、俯仰角±35度、昼夜兼用の3倍/10倍切り替え式）

砲手用潜望鏡
K1/K1E1初期型445両：ヒューズ社（現レイセオン）製GPSS（サーマル機能なし）
K1/K1E1後期型582両：テキサス・インスツルメンツ社（防衛事業は現レイセオン）製GPTTS（サムスン電子にてライセンス生産、サーマル機能あり）
K1A1/A2：国防科学研究所で開発、SAMSUNG THALESで製造されたKGPS（サーマル機能あり）

副火器

主砲同軸に7.62mm M60E2機関銃、装填手ハッチに7.62mm M60D機関銃が搭載されています。車長用には.50口径（12.7mm）K6重機関銃が搭載されています。砲塔前方の両側には6連装発煙弾発射基盤がそれぞれ配置されています。

火器管制システム

K1：横風センサー等を含む多数のセンサーを搭載したGeneral Dynamics Canada製16bitデジタル式射撃指揮装置を搭載し、静止目標・移動目標問わず射撃可能で、行進射撃能力も有します。
K1A1：SAMSUNG THALES製KBCSに換装され、32bitとなり処理能力が向上しています。

防護力

受動装甲
K1/K1E1：米国M1戦車の複合装甲をベースに開発されたSAPを直輸入して装着しています。
K1A1/A2：韓国Samyang Comtech社が開発したセラミック系KSAP複合装甲を装備しています。

防弾鋼板は米国製です。砲塔側面の雑具箱は空間装甲としての効果が期待されています。

K1E1/A2までの正面装甲厚は、初期型複合装甲でRHA換算400～500mm水準、国産複合装甲でRHA換算600mm水準とされています。

CBRN防護システム

M8A1警戒システムとM13A1ガス除去粒子フィルタで構成されています。

その他、エンジン室及び乗員室に自動ハロン火災消火装置及び火災検知装置を備えています。

機動力

動力

STXengine社がライセンス生産するMTU製1200馬力のMB871 Ka-501ディーゼルエンジンに、HYUNDAI TRANSYS社（旧Hyundai Dymos社）がライセンス生産するZF製SLG 3000トランスミッション（前進4段、後退2段）を搭載しており、K1の0-32km/hまでの加速時間は9.4秒です。

サスペンション

1番、2番、6番転輪に油気圧サスペンションを、残りの3番、4番、5番転輪はトーションバーを装備したハイブリッドサスペンションシステムを有しており、俯仰角を＋20度～－10度まで確保可能です。

地形走破性

K1は前方傾斜60%、側面傾斜30%まで登板が可能で、高さ1mの垂直障害物を乗り越え、幅2.74mの塹壕を超壕できます。潜水渡渉キットを装着すれば最大2.2mの深さの河川を渡渉可能で、装備がない状態でも1.2mの水深まで渡渉できます。

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