K9 155mm自走榴弾砲

K9 155mm自走榴弾砲：雷鳴轟く韓国の自走砲

K9 155mm自走榴弾砲は、韓国が開発した自走砲であり、国際市場では「サンダー」（Thunder）の愛称で知られています。2023年時点で、韓国軍向け1300両を含む2000両以上が世界中で運用されており、2000年から2023年1月までの世界の自走砲輸出シェアの52％を占めるなど、その人気と性能の高さを証明しています。

概要

K9は、韓国をはじめ、ノルウェー、エストニア、フィンランド、ポーランド、インド、トルコの7カ国で運用されています。さらに、オーストラリア、ルーマニア、エジプトも導入を決定しており、世界10カ国で採用されています。運用国や導入予定国の担当者、関連企業が集まり、「K9ユーザーズクラブ」という会合を開催し、運用、保守、訓練に関する知識やノウハウを共有することで、K9システムの能力を最大限に引き出すための取り組みが行われています。

砲火力

K9は、ヒュンダイWIA社とADDが共同開発したCN98 52口径155mm榴弾砲を搭載しています。最大仰角は70度で、弾丸は機力補助、装薬は手動で装填されます。射撃管制装置により、陣地進入からわずか60秒（停止状態からは30秒）で射撃を開始できます。最初の3分間は毎分6発、それ以降は毎分2発の持続射撃が可能です。また、15秒間に3発を発射し、同時に着弾させるToT（Time on Target）機能も搭載されており、高い攻撃能力を誇ります。

この能力により、「60秒（停止時30秒）で射撃準備→60秒間射撃（6発射撃）→30秒で離脱」を繰り返す「シュート・アンド・スクート」戦術を実行できます。車内には48発の弾薬を搭載可能です。

使用できる砲弾は、射程18kmのM107 HE、40kmのK307ERFB、50kmのK315 RAP、面制圧用のK310 DPICMなど多岐にわたります。K9A1以降は、米製の精密誘導砲弾も使用可能になり、さらに攻撃精度が向上しています。

防護力

K9は、ポスコが開発したMIL-12560H規格の装甲版を使用しており、NATO規格STANAG 4569のレベル4相当の防護力を備えています。30mの距離からの155mm砲弾の破片や、200mからの14.5mm徹甲弾の直撃にも耐えることができます。与圧式NBC防護装置や、内部温度上昇警告システム、自動消火装置なども搭載されており、乗員の生存性を高める工夫が凝らされています。

機動力

K9は、STX社がライセンス生産するMTU社製MT881KA-500ディーゼルエンジンと、統一重工がライセンス生産するゼネラルモーターズ社製ATDX1100-5A3トランスミッションを搭載しています。最高速度は60～67km/hです。サスペンションは、AS-90自走砲にも搭載されているHDS/Air-Log社製の油気圧懸垂装置をベースに、Mottrol社が改良したものを搭載しています。

60％までの傾斜地の登坂、0.75mの垂直障害物の乗り越え、幅2.8mまでの塹壕の通過が可能です。潜水渡渉能力はありませんが、エンジンへの浸水が発生しない深さ1.5mまでの渡渉能力を有しています。

開発経緯

北朝鮮がDMZ沿いに多数の火砲を配備している状況に対抗するため、韓国陸軍は1980年代から新型自走砲の開発を始めました。1989年1月にADDが自走砲開発チームを編成し、新型155mm自走榴弾砲の概念設計に着手しました。周辺国の自走砲や韓国砲兵の現状を分析し、長射程、高発射速度、自動射撃制御、高い機動性、生存性向上、国内独自開発という基本仕様を策定しました。

各国での運用と評価

K9は、導入国から高い評価を受けています。インド国防省は、機動性、最高速度、射撃精度、総合的な発射速度において、ロシア製2S19ムスタ-Sよりも優れていると評価しました。フィンランド国防省は、不整地や舗装道路での機動性が高く、徴兵された兵士に適していると評価しました。エストニア国立防衛出資センターは、突破力、装甲防護力、火力に優れ、45年の寿命があると評価しています。

派生型

K9には、トルコ仕様のT-155 Fırtına、インド仕様のK9 Vajra-T、フィンランド仕様のK9FIN Moukari、エストニア仕様のK9EST Kõuなど、各国のニーズに合わせた派生型が存在します。これらの派生型は、独自の改良が加えられ、各国の運用環境に最適化されています。

まとめ

K9 155mm自走榴弾砲は、高い性能と信頼性、そして各国のニーズに合わせた柔軟なカスタマイズ性により、世界中で広く採用されている自走砲です。その活躍は、今後も世界の防衛に貢献していくことでしょう。

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