KOI-5

KOI-5

KOI-5は、地球から約1870光年離れたところに位置する、3つの恒星から構成される重力的に束縛された天体システムです。このシステムは、主星であるKOI-5Aと、それに付随する2つの恒星、KOI-5BおよびKOI-5Cからなる三重星系として知られています。

星系構成

この複雑な星系を構成する恒星のうち、KOI-5A以外の比較的暗い恒星、KOI-5BとKOI-5Cは2016年にその存在が確認されました。KOI-5AとKOI-5Bは、互いに比較的近い軌道を約29年という周期で周回しています。一方、KOI-5Cは、KOI-5AとKOI-5Bからなる連星ペア全体を、およそ400年という長い周期で公転しています。詳細な分析から、KOI-5CはKOI-5AとKOI-5Bの中心ペアと物理的に、すなわち重力的に強く結びついている可能性が非常に高い（99.98%の確率で関連）と考えられています。

惑星系の探査

KOI-5系の周囲における惑星の存在は、初期の観測データから示唆されていました。アメリカ航空宇宙局（NASA）のケプラー宇宙望遠鏡による観測データに基づいて、2009年にはこの星系の周囲に2つの太陽系外惑星が存在する可能性が提唱されていました。しかし、これらの惑星候補の存在は確定には至りませんでした。

その後、トランジット系外惑星探索衛星（TESS）による追観測と詳細な分析が行われ、2021年1月にKOI-5Aの周囲を公転する太陽系外惑星、KOI-5Abの存在が確定しました。この惑星は、主星であるKOI-5Aの手前を通過（トランジット）する際の明るさの変化を捉えることで発見されました。

惑星KOI-5Abの特異な軌道

KOI-5Abの発見が天文学界で特に注目を集めたのは、その軌道が非常に特異であるためです。多くの惑星は、主星の自転軸に対して比較的整列した軌道面を持っています。しかし、KOI-5Abの軌道面は、主星KOI-5Aの赤道面（または恒星系全体の角運動量ベクトル）に対して大きく傾いている、つまりずれていることが判明しました。このような軌道面の傾きは、一般的には珍しい現象です。

この軌道面のずれは、KOI-5Abが形成され、あるいはその後の進化過程において、三重星系という特殊な重力環境の影響を強く受けた結果である可能性が高いと考えられています。具体的には、KOI-5BやKOI-5Cといった他の恒星からの重力的な摂動（かく乱）が、惑星の形成途上や軌道進化の初期段階で作用し、KOI-5Abの軌道面を主星の赤道面から大きく傾かせたと考えられています。さらに、このような重力干渉は、惑星が形成された場所から現在の内側軌道へと移動する「惑星移動」の一因となった可能性も示唆されています。

意義

KOI-5系は、三重星という複雑な環境下で惑星がどのように形成され、進化していくのかを理解する上で貴重な研究対象となります。多重星系における惑星の存在は、単独星系の惑星形成理論だけでは説明できない多様な現象を示しており、KOI-5Abの特異な軌道はその典型的な例と言えます。今後、KOI-5系の詳細な観測と理論的な研究が進むことで、多様な惑星系の成り立ちに関する理解がさらに深まることが期待されています。

もう一度検索