Ka-31 (航空機)

カモフ Ka-31

カモフ Ka-31（Кa-31）は、ソビエト連邦海軍の航空母艦向けに設計された軍用ヘリコプターです。この機体は、ロシアとインドの海軍で艦載早期警戒機（AEW）として広く使用されており、NATOコードネームでは「ヘリックスD」と呼ばれています。

開発の背景

1982年、ソ連海軍は最初の本格的航空母艦である「アドミラル・クズネツォフ」（当時の名称は「トビリシ」）に配備するため、アントノフ An-71の艦上機バージョンを開発していました。しかし1983年に入り、重量過多やレーダーの開発失敗が影響し、An-71の開発は失敗に終わりました。代わりに新たなプラットフォームとしてヤコブレフ Yak-44の開発が始まりますが、その間の空白を埋める早期警戒機の必要性が高まります。

このような状況の中、カモフ設計局は1980年から海軍用中型ヘリコプターのKa-31の開発に着手しました。Ka-31は、Ka-29を基にし、ニジュニイ・ノヴゴロド電波技術研究所が設計したレーダーを搭載することを目的としていました。初めて試作機が空を飛んだのは1987年のことです。

設計と機能

Ka-31の設計は、同軸反転式のメインローターを持ち、基本的にはKa-29に基づいていますが、エンジンはKa-27に使用されるTV3-117BKからTV3-117VMARに変更されています。これにより、運用能力が向上しています。また、搭載されるレーダーは、ニジニー・ノヴゴロド電波技術研究所によるE801M ”OКO”で、使用時には展開・回転し、非使用時には胴体下に収納される設計です。これに伴いコックピットが拡大し、電子機器の操作がより効率的になっています。

運用と配備

初飛行からの開発は1980年代末から90年代初め、ソ連の政治的混乱や国防予算の削減によって難航しました。しかし1995年には、限られた数量のKa-31がロシア海軍に引き渡され、艦隊に配備されました。インド海軍も1999年から2001年にかけて複数機のKa-31を発注し、2003年から2005年にかけて納入されました。しかし、インド海軍の運用では、Ka-31の「行動範囲」の狭さが問題として浮かび上がりました。このため、燃料補給システムの試験や改造が行われました。

その後、中国も2008年に9機のKa-31を発注し、自国の空母に装備しました。また、ロシアはミストラル級強襲揚陸艦にKa-31Rを装備するため、2機を発注し、2012年に納入されています。近年、インド向けの追加発注が経済制裁の影響で頓挫するなど、市場の変動も影響しています。

派生型

Ka-31にはいくつかの派生型があります。中でもKa-31Rは、レーダーをBKS-252に換装した改良型です。一方、Ka-35はKa-31Rを基にした陸上仕様で、地上目標の探知と追跡に特化されています。これにより、様々な運用環境に対応可能です。

運用国

• - ソビエト連邦 - ソ連海軍（Ka-29RLD試作型）
• - インド - インド海軍（Ka-31 14機）
• - ロシア - ロシア海軍（Ka-31R 2機）
• - 中国 - 中国海軍（Ka-31 9機）
• - ロシア - ロシア陸軍（Ka-35 2機試作型）

要目（Ka-31）

• - 乗員：2名（パイロット + ニュースオフィサー）
• - 全長：12.5 m
• - 翼幅：14.50 m ×2
• - 全高：5.6 m
• - 最大離陸重量：12,200 kg
• - エンジン：イソトフ TV3-117VMAR ターボシャフトエンジン×2
• - 最高速度：250 km/h
• - 巡航速度：205 km/h
• - 航続距離：324海里
• - 上昇限度：3,500 m

このように、カモフ Ka-31は海軍用として多機能な設計が施され、運用国によって様々なバリエーションが存在します。

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