L・V・プラサード

インド映画史において多大な足跡を残したL・V・プラサード（本名アッキネーニ・ラクシュミ・ヴァーラー・プラサード・ラオ、1908年 1月17日 - 1994年 6月22日）は、監督、プロデューサー、撮影監督、俳優、そして実業家という多岐にわたる顔を持つ、まさにインド映画界の先駆者でした。その功績は、インド映画界最高の栄誉とされるダーダーサーヘブ・パールケー賞（1982年）や、テルグ語映画への貢献を称えるラグパティ・ヴェンカイアー賞（1980年）の受賞によって高く評価されています。

生い立ちとキャリアの始まり

現在のアーンドラ・プラデーシュ州に位置するエールール近郊の村で、農業を営む家庭に次男として生まれたプラサードは、裕福な環境で育ちましたが、当初は演劇への関心は薄かったといいます。1924年に結婚し娘をもうけた後、父親が事業の失敗により破産したことを機に、彼は映画の世界へと目を向けます。

ボンベイ（現在のムンバイ）へ移り、ヴィーナス・フィルム・カンパニーで職を得たプラサードは、サイレント映画で端役としてスクリーンに登場します。1931年には、インド初のトーキー映画として歴史に名を刻む『アーラム・アーラー』にも出演しました。この初期の俳優活動の中で、彼は映画監督・プロデューサーのH・M・レッディと出会い、彼の作品である『Kalidas』（タミル語）や『Bhakta Prahlada』（テルグ語）にも起用されます。これらの作品への出演は、インドで初めて異なる3つの言語（ヒンディー語、テルグ語、タミル語）によるトーキー映画に出演した俳優という、彼のユニークな経歴の一部となりました。一度故郷へ戻り家族を伴ってボンベイに戻った後、息子アナンドとラメシュをもうけています。

監督・プロデューサーへの道

アリ・シャー監督の『Kamar-Al–Zaman』で助監督を務めた際、スタッフロールに本名が長すぎると指摘されたことから、「L・V・プラサード」という名義を使うようになります。俳優から助監督へと活動の中心を移した後、プリトヴィラージ・カプール主宰のプリトヴィ劇場に参加し、舞台での演技を通して表現への情熱を満たしました。ここで彼は、後に自身の監督作『Sharada』で主演を務めるラージ・カプールと出会います。

1943年、助監督として参加していた『Gruha Pravesam』で、予期せず監督と主演を兼任することになり、これが監督デビュー作となりました。その後も俳優として複数の作品に出演する一方で、1947年の『Palnati Yuddham』では体調不良の監督に代わりメガホンを取り、監督としての評価を高めます。1949年には『Mana Desam』を監督し、この作品には後のテルグ語映画界の巨星N・T・ラーマ・ラオが端役で出演しています。

1950年、ヴィジャヤ・ヴァヒニ・スタジオ初の製作映画『Shavukaru』の監督を務めた後、同年に監督した『Samsaram』では、N・T・ラーマ・ラオとアッキネーニ・ナゲシュワラ・ラオというテルグ語映画界の二大スターを起用し、興行的に大成功を収めました。この作品で描かれた社会派ドラマは、その後の多くの映画製作者に影響を与えたと言われています。1956年には、ダサリ・ヨーガナンド監督作『Ilavelpu』で初めてプロデューサーを務め、間もなく自身の映画製作会社プラサード・プロダクションを設立しました。また、1974年にはアメリカから帰国した次男ラメシュが、プラサード・フィルム・ラボを設立し、事業を拡大していきます。

実業家、そして映画界への貢献

1956年、プラサードは映画製作会社プラサード・アート・ピクチャーズに留まらず、スタジオ運営、特殊スクリーン施設（プラサード・ラージ・スクリーン、後のプラサードIMAX）、さらには社会貢献としてL・V・プラサード・アイ研究所までを含む多角的な企業体、プラサード・グループを立ち上げました。これは、彼が単なる芸術家ではなく、優れた実業家でもあったことを示しています。

プラサードはまた、インド映画界の発展に尽力し、様々な要職を歴任しました。1980年の第27回国家映画賞では選考委員長を、1981年の第8回インド国際映画祭ではインド・パノラマ部門の選考委員長を務め、同年には国際児童映画祭の審査委員長も務めています。さらに、1982年から1983年にかけて南インド映画商業会議所の議長を務めたほか、1980年から1987年まで映画検定委員会の委員、インド映画連盟の幹部としても活躍しました。

その生涯にわたるインド映画への多大な貢献を称え、2006年には記念切手が発行されています。

主な受賞歴

ダーダーサーヘブ・パールケー賞（1982年）
ラグパティ・ヴェンカイアー賞（1980年）
国家映画賞（タミル語長編映画賞、テルグ語長編映画賞）
フィルムフェア賞南インド映画部門生涯功労賞（1992年）

L・V・プラサードは、俳優、監督、プロデューサー、そして実業家として、インド映画の黎明期からその発展を牽引し、後世に多大な影響を与えた、まさに巨星でした。彼の築き上げたプラサード・グループは、現在もインドのエンターテインメント産業において重要な役割を果たしています。

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