LS-DYNA

LS-DYNAとは

LS-DYNAは、もともとLivermore Software Technology Corporation（LSTC）によって開発された構造解析ソフトウェアです。2019年にAnsysに買収され、現在はAnsysによって開発・販売されています。このソフトウェアは、特に非線形動解析においてその能力を発揮し、多くの産業分野で利用されています。

開発の経緯

LS-DYNAは、John O. Hallquistによって開発されました。彼はローレンス・リバモア研究所で開発していた陽解法有限要素法プログラム「DYNA3D」を基に、LS-DYNAを開発し、1987年にLSTCを設立して販売とサポートを開始しました。

LS-DYNAの特徴

LS-DYNAの最大の特徴は、陽解法による高速な非線形動解析の実現です。従来の陰解法では、エネルギーバランスの収束計算に時間がかかり、大規模モデルや長時間のシミュレーション、大きな変形や高速運動を扱うことは困難でした。LS-DYNAでは陽解法を用いることで、収束計算を省略し、運動方程式を時間単位で区切って計算することで、高速化と大規模計算を両立しています。

この技術により、自動車の衝突や落下といった大きな衝撃を伴う現象を、コンピュータ上で詳細に解析することが可能になりました。これにより、実験だけでなく、コンピュータ解析による予測が可能となり、自動車業界における衝突安全性や乗員保護性能の向上に大きく貢献しました。

また、LS-DYNAは陽解法だけでなく、陰解法のコードも実装しています。これにより、プレス加工のような大きな力と衝撃を伴う過程は陽解法で、プレス後の形状変化のような収束計算が必要な過程は陰解法で解析するといった使い分けが可能です。これにより、線形解析や周波数応答解析など、様々な解析に対応できるハイエンド汎用構造解析ソフトウェアとしての機能も備えています。

幅広い分野での活用

現在では、輸送機器のような大規模なものだけでなく、シャンプーや化粧品の容器、おもちゃなどの一般消費財の開発にも広く利用されています。ソフトウェア自体の価格は高価であり、大規模な問題ではスーパーコンピュータでの計算が推奨されるため、研究開発に投資できる企業での導入が多いです。主な導入業種としては、自動車、航空宇宙、防衛、電気機器、建設・土木、原子力などが挙げられます。

日本での展開

日本では、JSOL（旧日本総研ソリューションズ）、伊藤忠テクノソリューションズ、富士通が代理店としてLS-DYNAの販売とサポートを行っています。各社は、それぞれの強みを生かした独自のサービスを提供しています。

まとめ

LS-DYNAは、陽解法による高速な非線形動解析を可能にする強力なCAEソフトウェアであり、その高い解析能力から、自動車業界をはじめとする様々な分野で広く活用されています。Ansysによる買収後もその進化は続いており、今後も様々な分野での発展が期待されます。

外部リンク

Ansys LS-DYNAサイト
JSOL LS-DYNAサイト

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