Lip☆

Lip☆

大野安之による漫画作品『Lip☆』は、1985年から1987年にかけてサンケイ出版の『週刊サンケイ別冊 コミックWOO』にて連載されました。単行本は1987年に夢元社より、東京創元社を発売元として刊行されています。

概要

本作の最大の特徴は、宇宙全体が星を単位とした「国家＝会社組織」として描かれる独特な世界観です。特に地球は「本社」と呼ばれ、登場人物たちの間でもこの呼称が用いられます。この設定に基づき、大統領には「社長」、大統領補佐官には「重役」、そして政党には「政党」といったように、会社組織の役職名がルビとして付記される表現が多用されています。

物語は、地球本社の社長秘書を務めていた主人公、Lipの波乱万丈なキャリア転落から始まります。有機ドロイドと人間の特性を併せ持つLipは、ほんのわずかな手違いが原因で島宇宙の一つをブラックホール化させてしまうという大失態を犯し、その責任を問われて宇宙の辺境地域にある営業担当へと左遷されてしまいます。

本社への復帰を強く願うLipは、左遷先で営業活動に精を出すことになります。しかし、彼女の行く先には常に破壊と混沌が待ち受けていました。営業活動に取り組むたびに、惑星規模の全面戦争が勃発したり、武装勢力によるクーデターが発生したり、さらには強力な生物兵器が登場したりと、想像を絶するトラブルが次々と巻き起こります。

Lipは、思考能力を持つ特殊な宇宙船「そぶれいおん」を相棒として、これらの困難に立ち向かいながら営業活動を進めます。旅の途中、偶然の成り行きから古き神である「遐神（かがみ）」の力が宿るメダルを入手します。このメダルを遐神に返還した見返りとして、Lipは遐神から「たった一つの願い」を叶える特別な力を授けられます。そして、Lipはこの力を用いて、失脚した地球本社への潜入を試みるのです。

登場人物

Lip：本作の主人公。有機ドロイドと人間のハーフで、卓越した能力を持ちながらもトラブルを引き起こしがちな人物。元は地球本社の社長秘書でしたが、辺境の雑役部門営業担当に左遷されます。本社復帰を最大の目標としています。
ブリッジマン：Lipの信頼できる相棒であるドロイド。当初は自身でも気づいていない変形機能や重装備といった隠された能力を持っていましたが、物語の途中でモデルチェンジを経たことでこれらの能力は失われます。思考型宇宙船そぶれいおんの維持・運営を担当し、Lipを支えます。
課長：地球社超重機部門の課長であり、立場上はLipの直接の上司にあたる人物。
かふ・はーしー：Lipが辺境に左遷される原因を作り、その実行者となった人物です。
こんすてれーしょん・ろっくへっど：Lipの抹殺を目的として、う゛ぉーぐによって派遣された工作員。
遐神（かがみ）：悠久の時を生きる古き神。自身の力の象徴であるメダルを取り戻したLipに対し、「たった一つの願い」を叶える力を授けます。
遐族（かぞく）：遐神に仕える存在たち。
ばーくれい：地球本社の警備部門責任者。
う゛ぉーぐ：地球社の大統領補佐官。Lipを左遷させたかふ・はーしーとも関係がありそうです。

単行本情報

大野安之『Lip☆』は、夢元社より発行され、東京創元社が発売した単行本〈Live Comics〉として刊行されています。

初版発行：1987年4月10日
* ISBN：4-89584-006-9

この作品は、独特な企業組織SFの世界観と、主人公Lipの破天荒な行動が巻き起こす騒動、そしてシリアスな展開とコメディ要素が混在する作風が魅力と言えるでしょう。左遷された主人公が壮大な宇宙を舞台に繰り広げる、笑いと破壊に満ちた物語です。

もう一度検索