LiteBIRD

LiteBIRDミッションの概要

LiteBIRD（Lite satellite for the studies of B-mode polarization and Inflation from cosmic background Radiation Detection）は、日本が打ち上げを2028年度に予定している科学衛星です。このプロジェクトは宇宙誕生直後に発生した原始重力波を検出し、インフレーション理論を検証することを目指しています。2019年に、宇宙科学研究所（ISAS）によって戦略的中型2号機に選定されました。この衛星計画は、これまでに成功例がないBモード偏光の検出に特化したもので、宇宙の形成過程を理解するための重要な手段となると期待されています。

インフレーション理論とLiteBIRDの役割

インフレーション理論は、宇宙が誕生した後の急激な膨張を説明するものであり、宇宙誕生からビッグバンまでの過程を理解するために重要な理論です。この理論によれば、誕生直後の宇宙には量子ゆらぎが存在し、インフレーションの時期にこれらが引き延ばされて原始重力波が生じるとされています。これらの重力波は、約38万年後の宇宙の晴れ上がりの際に、宇宙マイクロ波背景放射（CMB）に偏光として「Bモード」と呼ばれるパターンを残すと考えられています。

Bモードの検出は、インフレーション理論を裏付ける決定的な証拠となる可能性があるため、LiteBIRDはこの課題に取り組む唯一の衛星計画です。2020年代の衛星計画として、欧州宇宙機関（ESA）のCOrEやNASAのPIXIEも検討されましたが、コストや競合の影響で採択されなかったため、LiteBIRDが唯一の候補となりました。

ミッションの背景と進め方

LiteBIRDミッションの始まりは2008年にさかのぼります。高エネルギー加速器研究機構（KEK）の羽澄昌史を責任者としたワーキンググループが設立され、2015年にはISASに公式提案されました。その後、各種審査を通過し、2019年には最終的に戦略的中型2号機としての地位を確立しました。これにより、宇宙誕生時期における原始重力波の探索が本格的に進むことが決定されたのです。

参加機関と国際協力

この衛星プロジェクトは、宇宙航空研究開発機構（JAXA）が中心となって推進しています。プロジェクトの運営や技術開発は、さまざまな国内外の研究機関が参加しており、日本の他にヨーロッパ、アメリカ、カナダなども関与しています。プログラムの各部分は、特定の機関が担当することで、国際的な協力体制が構築されています。具体的には、JAXAがプロジェクトのマネジメントを担当し、観測機器の開発は多様な大学や研究機関により行われています。

観測機器の構造

LiteBIRDの観測装置は、大きく低周波望遠鏡（LFT）と中高周波望遠鏡（MHFT）の2つに分けられます。これらは、34 - 448 GHzの波長のミリ波を15のバンドで高精度に観測し、天の川銀河からの前景放射を取り除く機能を果たします。さらに、望遠鏡および検出器は極低温で運用され、熱放射によるノイズを最小限に抑えます。

このように、LiteBIRDミッションは宇宙の起源に迫る挑戦的なプロジェクトであり、インフレーション理論の検証や、量子重力理論の実験的成就に向けて新たな道を切り拓くことが期待されています。

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