M-3Hロケット

M-3Hロケット：日本の科学衛星打ち上げを支えた高性能ロケット

M-3Hロケットは、東京大学宇宙航空研究所（現・宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所）と日産自動車宇宙航空事業部が共同で開発した、科学衛星打ち上げ用の3段式固体燃料ロケットです。その高い性能と信頼性から、日本の宇宙開発に大きく貢献しました。

M-3Cロケットからの進化

M-3Hロケットは、先行モデルであるM-3Cロケットをベースに開発されました。M-3Cロケットの第一段目を延長することで、打ち上げ能力の大幅な向上を実現しました。M-3Cの「C」が「Control（制御）」を表すのに対し、M-3Hの「H」は「High Performance（高性能）」を意味しており、その性能の進化を象徴しています。両ロケットは多くの構成要素を共有しており、ミューロケットシリーズの第二世代として位置付けられています。興味深いことに、M-3Cは代替衛星の打ち上げニーズがあったため、M-3Hの運用終了後も運用が続けられました。

主要諸元と技術的特徴

M-3Hロケットは、全長23.8m、直径1.41m、重量48.7tという堂々たるサイズを誇ります。これは、M-3Cロケット（全長20.2m、重量41.6t）と比較して、一回り大型で重量も増加していることを示しています。このサイズアップによって、低軌道への打ち上げ能力は、M-3Cの195kgから300kgへと大幅に向上しました。この増強された打ち上げ能力は、より大型で多機能な科学衛星の打ち上げを可能にしました。

打ち上げ実績と軌道誤差

M-3Hロケットは、数々の科学衛星の打ち上げに成功しました。しかし、その軌道誤差はM-3Cに比べて大きかったことが知られています。この原因の一つとして、ランチャー発射角を全ての打ち上げで71度に固定した試験的な運用が挙げられます。これは、打ち上げの簡素化やコスト削減を狙ったものと考えられますが、軌道精度の面ではトレードオフが生じたと言えるでしょう。

M-3Hロケットの意義

M-3Hロケットは、日本の宇宙開発史において重要な役割を果たしました。M-3Cロケットの改良型として開発され、その高い打ち上げ能力は、数々の科学衛星の打ち上げを成功に導きました。日本の宇宙科学研究の発展に大きく貢献しただけでなく、ロケット技術の進歩にも貢献したと言えるでしょう。 M-3CとM-3Hの開発・運用は、大学と民間企業の連携による宇宙開発の成功例として、後世に語り継がれるべきものです。軌道誤差の問題はありましたが、その技術的挑戦と成果は、後の日本のロケット開発に貴重な経験と教訓をもたらしたことは間違いありません。今後の日本の宇宙開発においても、M-3Hロケットの成功と失敗から得られた知見が活かされていくことでしょう。

参考資料

東京大学航空宇宙研究所報告・M-3H特集号
JAXA/ISAS 衛星打上げ用ロケットM-3H

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