M103重戦車

M103重戦車：冷戦下の脅威に対抗したアメリカの重戦車

M103重戦車は、第二次世界大戦後の冷戦初期にアメリカ合衆国が開発した重戦車です。ソビエト連邦のIS-3重戦車の登場に対抗するため、その脅威に対抗しうる車両として開発されました。

開発の経緯

IS-3重戦車が1945年のベルリン戦勝記念パレードに登場した際、アメリカ軍はその強力な火力と重装甲に衝撃を受けました。これに対抗するため、アメリカは既存のT34重戦車の設計を基に、新たな重戦車の開発に着手しました。当初は自動装填装置付きの120mm砲を搭載するT43重戦車として開発が進められましたが、後に手動装填方式に変更され、1956年にM103として制式化されました。

設計と構成

M103は、当時のアメリカ戦車、M47/M48やM60と類似したデザインを持ち、部品の多くを共用していました。しかし、120mm砲とその分離式砲弾、2名の装填手を収容するため、砲塔は非常に大型化されました。大型の砲弾を扱う関係から、砲塔内の弾薬庫はターレットリング後方に配置され、車長席はその後方に位置していました。65トンもの重量を支えるため、履帯とサスペンションは強化されましたが、初期のモデルではM48と同じガソリンエンジンを使用していたため、パワー不足が課題でした。

各型

T43E1: 最初の生産型。
M103: T43E1を改修した制式採用型。
M103A1: 新型の照準器と弾道コンピューターを搭載。
M103A1E1: エンジンを換装し、近代化改修を実施。
M103A2: M103A1E1の制式名称。M60A1戦車と同じディーゼルエンジンに換装し、路上速度と航続距離が向上。

派生型

M51戦車回収車: M103の車体を流用して開発された戦車回収車。アメリカ海兵隊のみで使用されました。

運用と退役

M103は、開発の遅れから朝鮮戦争には間に合わず、その重量故にベトナム戦争にも投入されることはありませんでした。西ドイツに駐留する独立戦車部隊に配備された他、アメリカ海兵隊でも運用されました。しかし、M60主力戦車の配備が進むにつれてその存在意義は薄れ、1970年代には退役しました。

登場作品

M103は、以下のゲーム作品に登場します。

War Thunder
World of Tanks
トータル・タンク・シミュレーター
征途

参考文献

ガリレオ出版『GROUND POWER』2005年3月号 No.130 特集・第2次大戦後のアメリカ軍重戦車
白石光「M103重戦車の開発とメカニズム」
アルゴノート社『PANZER』2006年11月号 No.417 p20～p38

関連項目

戦車一覧
コンカラー重戦車
T-10
* T29重戦車

M103重戦車は、冷戦初期におけるアメリカの重戦車開発史を語る上で欠かせない存在です。ソ連の重戦車に対抗するために開発されましたが、その活躍の場は限定的でした。しかし、その設計思想や技術は、後のアメリカ戦車開発に大きな影響を与えました。

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