M105 (天体)

M105（NGC 3379としても知られる）は、夜空にしし座の領域に見られる楕円銀河です。この銀河は、近隣にあるM95やM96といった他の明るい銀河と共に、『しし座銀河群』と呼ばれる銀河の集団を構成しており、この銀河群の中で比較的目立つメンバーの一つとされています。

M105の特に注目すべき点は、その中心構造にあります。1997年にハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられた高解像度の画像は、非常に明るくコンパクトな中心核が存在すること、そしてその周囲に細いリング状の模様があることを明らかにしました。このようなリング構造は、過去の銀河との相互作用やガスの流入によって形成された可能性が考えられています。さらに、銀河の中心部には、太陽質量の約5000万倍にも達すると考えられる非常に大きな質量を持つ天体が存在していると推測されています。このような巨大天体は、多くの銀河の中心に見られる超大質量ブラックホールである可能性が高く、銀河の進化に重要な役割を果たしていると考えられています。

アマチュア天文家がM105を観測する際の注意点として、その見え方は使用する光学機器に大きく依存します。例えば、双眼鏡ではM105は残念ながら単なる一つの星のようにしか見えないことがほとんどです。しかし、口径10cmクラスの小型望遠鏡を用いると、銀河の姿がぼんやりと広がった楕円状に見え始め、特に中心部分が周囲より一段と明るく見えるのが分かります。さらに、この口径の望遠鏡であれば、M105と比較的近い位置にある楕円銀河のNGC 3384を同じ視野内に捉えることができ、両者を比較してM105の方が明るく見えることを確認できます。さらに大きな口径、例えば30cm級の望遠鏡を使用すると、さらに淡いNGC 3389も視野に入ってくるようになります。大口径の望遠鏡でこの領域を深く観察すると、M105やその近隣の銀河が、実は多数の銀河が密集している宇宙の一角を占めていることが実感できるでしょう。

M105の発見は、1781年3月24日にフランスの天文学者ピエール・メシャンによってなされました。これは彼がM95とM96を発見した数日後、そして有名な銀河であるM101よりも3日早い出来事でした。しかし、興味深いことに、シャルル・メシエが1784年に刊行した有名なメシエカタログの第3版には、M105の記載がありませんでした。なぜ記載が漏れてしまったのかは定かではありませんが、このためM105は長らくメシエカタログから外れたままでした。その後、20世紀に入ってから、カナダの天文学者ヘレン・ソーヤー・ホッグが、ピエール・メシャンの古い観測記録を再調査し、その存在と位置を正確に確認しました。そして1947年、彼女の働きかけによって、M105はM106、M107といった他の天体と共に正式にメシエカタログに追加され、M105という現在の一般的な呼称で広く認識されるようになったのです。

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