M30 (天体)

球状星団 M30 (NGC 7099)

やぎ座に位置するメシエ天体M30 (NGC 7099) は、比較的明るい球状星団として知られています。観測には双眼鏡でも十分捉えることができ、その姿はまるく小さく、淡い星雲のように見えます。この星団の顕著な特徴は、中心部が非常に明るく星が密集している一方で、その周辺は約5分角にわたって徐々に淡く拡散している点です。

周辺部の微かな星（微星）の見え方については、過去の観測者の間で意見が分かれています。たとえば、天文学者のフェーレンベルクは、口径10cmの望遠鏡に160倍の倍率を用いることで、周辺部の微星を確認できたと報告しています。一方で、マラスは口径10cmの屈折望遠鏡では外側が不規則に見え、微星も捉えられるが、観測条件が悪いと難しいと述べています。しかし、口径が12.5cmクラスになれば、いつでも微星が視認できるとも付け加えています。さらに口径を大きくし、20cmクラスの望遠鏡で観測すると、周辺にはかなりの数の微星が見え始め、かすかな星の連なり、すなわち星の流れのような構造も捉えられるようになります。

M30の中心部は、南側にやや偏って見えます。また、中心部の北側には、まるで角のように見える3本の星の流れが確認できます。ただし、これらの星の流れは、長時間露光を行った写真画像では明確に識別することが難しい場合があるようです。

この星団の中心部の構造は、同じく球状星団であるM15と類似している点が指摘されています。両者ともに中心部が極めて高い密度で密集しており、これは星々の間の重力的な相互作用によって、中心部で構造的な崩壊（コア・コラップス）が進んでいる可能性を示唆するものと考えられています。

観測史

M30は、1764年8月3日にフランスの天文学者シャルル・メシエによって発見されました。メシエは自身の天体カタログにこの天体を41番目の星の近くにある星雲として記載し、使用した3.5フィート（約1メートル）の望遠鏡では「どうにか見える」程度の対象であったと記録しています。当時の観測技術では、球状星団と星雲の区別が難しかったことがうかがえます。

その後、1783年にイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルがM30を観測しました。ハーシェルは観測の中で、この天体に2本の星の流れが存在し、その中に4つか5つの星が見えることを確認しました。彼はこれらの星が星団に属している可能性が高いと考え、メシエが捉えた「星雲」が実は星々の集まりである「星団」であると認識しました。ハーシェルの観測は、M30がガスや塵の集まりではなく、無数の星が集まった天体であることを明らかにする重要な一歩となりました。

現代の観測技術によって、M30は太陽系の約2万7000光年彼方にあることが分かっており、その直径は約80光年、含まれる星の数は数十万個と推定されています。その密度の高い中心部や特徴的な星の流れは、星団の進化の過程を理解する上で興味深い研究対象となっています。

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