M58 (天体)

M58

概要

おとめ座に輝くM58（正式名称NGC 4579）は、中央に棒状構造を持つ美しい渦巻銀河です。広大なおとめ座銀河団に属する数多くの銀河の中でも、比較的明るく観測しやすい天体の一つとして知られています。

観測条件が良好でない場合、口径5cm程度の小型望遠鏡では捉えるのが難しいこともあります。もし見えたとしても、それはぼんやりとした楕円形の光の染みのように見えることが多いでしょう。しかし、より大きな望遠鏡を用いると、その姿はより鮮明になってきます。

例えば、口径10cmクラスの望遠鏡を使用すると、観測者のマラスは、これは口径4cmのファインダーでも確認できる明るさであり、銀河の西側約7分角の位置に8等級の星が見えることを指摘しています。さらに、銀河の中心部はピカピカと明るく輝いて見え、銀河全体はかなり楕円形をしており、その周囲は淡い「かさ」のような構造に囲まれているようです。輝く核は銀河の北西方向に位置しており、マラスは小口径の望遠鏡でも注意深く観察すれば興味深い対象だと述べています。

口径が20cmクラスになると、観測者のジョーンズは、M58はおとめ座銀河群の中で最も明るいM60に似ているが、M60よりも大きく、中心部の明るい凝縮部もより大きいと感じたようです。彼は、銀河の中央にある棒状の部分が東西に伸びているのが確認でき、銀河の短軸方向の境界は長軸方向に比べてはっきりと見えたと記しています。また、中口径の望遠鏡でも倍率を上げても像が崩れにくく、観測に十分耐える性質を持っていることも報告されています。

超新星

M58は、これまでに二つの超新星の発生が確認されています。一つ目は1988年1月18日に日本の天文学者、池谷薫氏によって発見されたII型超新星「SN 1988A」です。二つ目は1989年6月28日にKimeridze氏によって発見されたIa型超新星「SN 1989M」です。このように、M58は超新星という劇的な天文現象が繰り返し観測される銀河でもあります。

観測史

M58が天文学史上初めて記録されたのは、1779年4月15日のことです。有名なフランスの天文学者シャルル・メシエが、自身のカタログに収めるための彗星捜索を行っている際に、同じおとめ座にあるM59やM60といった他の銀河と共に偶然発見しました。メシエは当時の記録に、「おとめ座にある非常に淡い星雲で、およそ3等星とほぼ同じ高度に見える。この星雲は、観測に使ったマイクロメーター（測微尺）の糸が少しでも光にかかると、すぐに見えなくなってしまうほど微光であった」と書き残しています。

M58は、銀河が渦巻状の構造を持つことが認識され始めた初期の段階で、その特徴が指摘された天体の一つでもあります。1850年にイギリスの天文学者ロス卿（ウィリアム・パーソンズ）がまとめた、初めての「渦巻星雲」のリスト14個の中に、このM58も含まれています。

その後、1864年にはイギリスの天文学者ジョン・ハーシェルがM58を観測し、「明るく、比較的大きく、完全な円形ではなくいびつな形をしている。中央部分は驚くほど明るく輝いて見える。注意深く見れば、何か構造に分かれそうにも感じられるが、むしろ星像がにじんでいるようにも見える」と詳細な記録を残しています。初期の観測機器では、その棒渦巻銀河としての複雑な構造を明確に捉えることは難しかったことがうかがえます。

M58は、これらの歴史的な観測を経て、その正体が明らかになってきた天体であり、現在もアマチュア天文家からプロの研究者まで、多くの人々に観測され続けています。

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