M65 280mmカノン砲

M65 280mmカノン砲とは

M65 280mmカノン砲は、1953年から1963年にかけてアメリカ陸軍が使用した野戦重砲で、特に核砲弾を射撃する能力を持つことで知られています。この砲は「アトミックキャノン」という愛称でも呼ばれ、冷戦時代の象徴的な兵器の一つです。

開発の背景

M65は1949年にアメリカ陸軍のピカティニー・アーセナルで開発がスタートしました。当初の計画では口径240mmの砲が考えられていましたが、核兵器の小型化には限界があり、最終的に280mmという大口径が採用されることになりました。1953年から実際の配備が始まり、主に西ドイツ、韓国、沖縄に展開されました。

移動と運用

この砲は自走式ではなく、移動の際は特製トレーラー「M249」と「M250」を使用して、コンチネンタル製のAO-895-4ガソリンエンジンで牽引される形で運搬されました。砲を射撃状態から移動状態に切り替えるのには約15分が必要で、逆も同様の時間がかかりました。

核実験と配備

1953年5月25日には、ネバダ核実験場で核砲弾W9を使用した実射が行われ、国防長官や統合参謀本部の高官が立ち会う中、その威力が確認されました。この実射はM65にとって唯一の実験となりました。その後、1955年から1962年にかけて、ヨーロッパとアジアの地域に20門が配備されました。配備先では、敵に発見されないように設置場所が頻繁に変更されていました。

事件と記録

1955年10月25日に沖縄の宜野座キャンプ・ハーディーでの試射の際には、100メートル先にある松田小学校の児童に影響が出るという事件が発生しました。衝撃波で飛び散ったガラスが児童に当たって怪我をするというもので、その後この砲に関する記録写真が普天間飛行場でも残されています。国防総省によれば、沖縄には1955年から1960年の間にこの砲が配備されていたとされています。

核砲弾の変更

配備されていた核砲弾は、1952年からW9が使用されていましたが、1955年から1957年にかけては改良型のW19に切り替えられました。両型式の核砲弾はそれぞれ80発が生産されています。

その後の運命

M65は核兵器の小型化や新型ミサイルの開発により次第に旧式化しましたが、1963年までは軍に残り続けました。この重砲の特殊な役割と高い攻撃力は、冷戦の時代における軍事的な緊張感を象徴するものでした。

要目

• - 重量：83.3トン
• - 長さ：25.6メートル
• - 幅：4.9メートル
• - 高さ：3.7メートル
• - 操作人員：5-7名
• - 口径：280mm
• - 射程：約30km
• - 使用核砲弾：W9、W19

このように、M65はその独特な設計と役割を通じて、冷戦期のアメリカ陸軍の防衛戦略に重要な位置を占めていました。

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