M8トラクター

M8トラクターについて

M8トラクター（正式名称：M8高速度牽引車）は、アメリカ合衆国で開発された砲兵トラクターです。この車両は陸上自衛隊においては「25tけん引車 M8」として運用されました。第二次世界大戦の初めに開発され、部隊配備された評価の高い砲牽引車を元に、その後の発展形として位置づけられています。

概要

M8トラクターは、戦闘車両であるM41軽戦車とエンジンや転輪の駆動構造が共通しているため、広義にはM41の派生型に分類されます。この車両は、様々な火砲を牽引し支援するために設計され、アメリカ軍ではその用途のほかにも装軌式の輸送車両としても利用されました。ですが、第二次大戦後に砲兵部隊の自走化が進む中、砲牽引車としての役割は早期に終了し、1960年代後半にはほとんどのM8が退役しました。その一部は民間に払い下げられ、重機として利用された経歴があります。日本の陸上自衛隊でも1978年まで使用されました。

開発の背景

アメリカ軍は、各種の中-重砲を牽引するために15トン、18トン、38トンの砲兵牽引車を開発し運用していましたが、これらは旧式設計によるものであり、性能に不満が残っていました。1944年、これを解決するために新型砲兵牽引車の開発が決定され、要求されたのは最大牽引力6,000ポンド（約2.73トン）から30,000ポンド（約13.6トン）までの3種類でした。

改良と試作

特に注目すべきは、試作車両T16からの技術が活用された際に、M18駆逐戦車の駆動装置をベースにしたM8が企画されたことです。複数のテストを経て、1946年6月にはM8として制式化されました。

その後も試作車両の開発が行われ、各種の改良が加えられていきました。M8E1、さらにはM8A1としての量産型が製造され、最終的にはおおよそ480両が生産されました。1954年にはM8A2が改良型として作られましたが、以降は砲牽引車の役割が薄れていったため、発注は中止されました。

運用実績

M8A1は1951年より部隊に配備され、朝鮮戦争やベトナム戦争で実戦投入が行われましたが、アメリカ軍の火砲自走化が進むにつれ次第に装軌式支援車両としての運用が中心となっていきました。さらに、M113装甲兵員輸送車の登場により、M8トラクターの役割は次第に減少し、1973年にはアメリカ軍において運用が終了しました。

日本の陸上自衛隊では1958年からM8A1が高射特科部隊に配備され、75mm高射砲M51の牽引を行いましたが、1960年代後半には順次他の牽引車に置き換えられ、1978年には全車両が退役しました。

特徴

M8トラクターは、多様な火砲を牽引しつつ、それらに必要な作業人員や弾薬を運搬する能力があります。最大で7.94トンの貨物を搭載でき、最大17.7トンの牽引力を備えています。機関室の左右には密閉式キャビンがあり、右側には重機関銃の装備が可能であり、整備は容易に行える設計がなされました。

さらに、M8はその見た目が戦車に近いため、映画の撮影用に多くのシーンで利用されることもありました。過去の映画作品においても、その存在感を示しています。

各型

• - T42: 試作型。6両生産。
• - M8: 制式採用名。
• - M8E1: 制式採用名での量産型。
• - M8A1: M8E1の量産型。
• - M8A2: M8A1の改良型。

M8トラクターは、歴史的な車両としての役割を果たし、その技術は軍事運用だけでなく民間にも影響を与えつつ、各軍の装備の進化に寄与してきました。

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