高射砲

高射砲の歴史と技術

高射砲（英: anti-aircraft gun）は、主に空中目標に対して使用される火砲であり、防衛省の基準では対空砲と同義とされています。高射砲の起源は、1870年の普仏戦争にさかのぼります。この時期、包囲下のパリから脱出しようとする気球を狙うために、クルップ社が開発した小口径砲が高射砲の初期形態とされています。以降、航空機の発展に伴い、高射砲も各国で急速に進化していきました。

高射砲の進化

第一次世界大戦を経て、高射砲の設計には多くの工夫が施されました。当初、多くの高射砲は野砲を基に大仰角を持たせる形で開発されており、これにより高角射撃が可能となっていました。しかし、航空機の速度が向上すると、それに対応するために高射砲にも新たな特性が必要になりました。これには、高初速や大発射速度、旋回・俯仰の迅速さなどが加わり、各国はこれらの要件を満たす砲の開発に力を入れました。

また、高射砲においては、効果的に機能する信管の開発も重要です。初期の高射砲では、火薬燃焼式の時限信管が使われていましたが、第一次大戦中には信頼性の確保が課題となりました。大戦末期には、ドイツのクルップ社が機械式の時限信管を実用化しましたが、これも高価かつ複雑で、長射程の榴弾砲でしか使用されていませんでした。しかし、戦間期には高射砲でも利用されるようになりました。第二次世界大戦中においては、ドイツ空軍が機械式の時限信管から着発信管へと切り替える一方、アメリカ合衆国は近接信管（VT信管）を実用化し、高射砲の effectiveness を大きく向上させました。

対空機関砲の台頭

1930年代になると、低高度の航空機に対する捕捉が困難という新たな課題が生まれ、高射砲の限界が明らかになりました。これに対処するため、対空機関砲の導入が注目を集めます。さらに、航空機性能の向上によって中・高高度の目標への対処も高射砲の能力を超えるようになり、地対空ミサイル（SAM）が主流となる時代を迎えます。にもかかわらず、高射砲は電子攻撃(EA)を受けても目視による照準ができるなどの利点を持ち、特に東側諸国では今なお広く利用されています。

高角砲との関係

艦船に搭載される高射砲は、高角砲（英: high-angle gun, HA gun）とも呼ばれ、主に第一次世界大戦以降にイギリス海軍が高仰角を持つ艦砲として採用しました。戦間期には、駆逐艦の設計上の制約から専用の高角砲を備えられない場合も多く、既存の砲架を流用して仰角をわずかに増した平射砲と、高角射撃に対応した機関銃が対空兵器として使用されることが多々ありました。

アメリカ海軍においては、対空と対水上射撃を兼備した両用砲の導入を進め、重巡洋艦や駆逐艦などにも多く採用されました。イギリス海軍も戦争の教訓を踏まえ、既存の高角砲では航空機の脅威に対処できないと判断し、両用砲の導入を模索するようになりました。

これらの歴史的背景を踏まえると、高射砲はただの火器ではなく、時代の変化と技術の革新を反映した重要な防空システムとして位置づけられることがわかります。今後もその役割と進化が注目される分野です。

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