M84 (天体)

M84 (NGC 4374)

M84は、おとめ座の方向に約6000万光年離れた位置にある、レンズ状銀河に分類される天体です。おとめ座銀河団の一員であり、この銀河団の中心近くに位置しています。特に、多くの銀河が一列に並んでいるように見える「マルカリアンの鎖」と呼ばれる構造の一部を担っています。

観測と見え方

M84を観測するには、ある程度の口径を持つ望遠鏡が推奨されます。例えば、口径5cm程度の小型望遠鏡では、非常に淡く捉えるのが難しいとする報告もありますが、一般的には観測困難とされています。口径10cmクラスの望遠鏡を使用すると、隣接するM86（NGC 4406）とともに視野に捉えることが可能になります。この二つの銀河はどちらも楕円形に見えますが、M84はM86に比べてわずかに丸みを帯びており、また明るく、見かけ上のサイズは小さく映ります。

口径20cmクラスの中型望遠鏡を用いると、M84の存在をはっきりと確認できるようになります。さらに、視野にはM86に加え、NGC 4388、NGC 4435、NGC 4438といった、より淡い周辺の銀河たちも視認できるようになります。口径が30cmクラスまで大きくなると、NGC 4402、NGC 4387、NGC 4388など、さらに多くの銀河が捉えられるようになります。このように、M84とM86の周辺領域を大口径の望遠鏡で低倍率で観察すると、驚くほど多数の銀河が密集している様子を確認できます。この領域からNGC 4435、NGC 4438、NGC 4461、NGC 4473、NGC 4477、NGC 4459、NGC 4474、そしてM88にかけては、銀河がまるで鎖のように連なっているように見え、これが有名な「マルカリアンの鎖（マルカリアンの銀河鎖）」として知られています。

特徴

M84の中心部からは、比較的小規模なジェットが噴出していることが観測されています。このジェットは、1997年にハッブル宇宙望遠鏡による詳細な観測によってその存在が確認されました。このジェットの存在は、銀河中心部に活動的な天体があることを示唆しています。現在の研究によると、M84の中心には、太陽質量の約3億倍にも達する巨大なブラックホールが存在すると考えられています。この巨大ブラックホールが、ジェット活動のエネルギー源となっている可能性が高いと見られています。

観測史

M84は、1781年3月18日にフランスの天文学者シャルル・メシエによって発見されました。メシエはこの夜、M84を含む8つの銀河と、球状星団M92を発見するという、精力的な観測を行っています。

メシエ自身は、自身のカタログにおいてM84を「星を含まない星雲」と記述しています。また、「中心部はかなり明るく、やや星雲状の物質に取り囲まれている」とし、その明るさや外見が同じカタログに収録されているM59やM60に似ていると記録しています。

19世紀に入ると、イギリスの天文学者ジョン・ハーシェルは、1868年の自身のカタログでM84について「非常に明るく、かなり大きい」と記しています。また、「丸い形状をしており、中心部は急激に明るくなっている」とし、「どうやら分離できる」とも付け加えています。

ドイツの天文学者ハインリッヒ・ダレストは、M84の中心部がよく輝いていること、円形であること、中心部に向かって次第に明るさが増していることを観測しています。彼は最小限の直径を3分角以上と見積もり、核の明るさを10等星から13等星に匹敵すると記しています。さらに、M84に非常に近い南側に、小さく青白い小星雲（現在の観測では他の銀河と考えられている）が続いていることにも言及しています。

もう一度検索