M98 (天体)

M98（NGC 4192）は、りょうけん座との境界近く、かみのけ座の領域に位置する美しい渦巻銀河です。メシエカタログの98番目に登録されており、天体観測の対象として知られています。

見つけ方と観測のポイント

M98は、かみのけ座を構成する主要な星の一つである6番星（β Comae Berenices）のすぐ西、約40分角の距離に位置しており、比較的場所の見当はつけやすい天体と言えます。しかし、その光は非常に淡いため、小型の望遠鏡で捉えるには少々根気が必要です。口径6.5cm、倍率25倍程度の望遠鏡では、注意深く、視野の中をあちこちと視線を動かすような工夫をしないと見つけにくいことがあります。視線を意図的に視野の中心から外す「そらし目」という技法を用いることも有効でしょう。

望遠鏡の口径を大きくするにつれて、その姿は次第に詳細に見えてきます。口径8cm程度になると、銀河の中心部が周辺より明るく輝いている様子が認識できるようになります。M98はその形状が細長いため、写真に収めると、明るい中心部から両側に長く伸びた姿が印象的です。

さらに口径が大きくなると、銀河の形状がよりはっきりします。好条件の下、口径10cmクラスの望遠鏡では、コンパクトな球状星団のように見えることもあります。口径15cmクラスになると、銀河が左右に広がった楕円形であることを確認できるようになります。そして、口径20cmを超えるような大型の望遠鏡を用いると、銀河の腕が周囲の暗い空の中に淡く拡散していく様子、すなわち「ハロー」の存在も捉えられるようになります。

発見の歴史

M98銀河は、1781年3月15日にフランスの天文学者ピエール・メシャンによって発見されました。この日、メシャンは偶然にも、同じメシエカタログに登録されているM99とM100という別の渦巻銀河も同時に発見しています。彼はM98について、発見当時の記録に「星のない星雲。極端に微か」と記しており、その淡さに言及しています。

その後、1783年にはイギリスの著名な天文学者ウィリアム・ハーシェルがこの天体を観測し、その見解を残しています。ハーシェルはM98を「大きくよく広がった、きれいな星雲」と評価しました。彼は、その位置がシャルル・メシエのカタログにあるM98に一致することを確認しつつも、メシエの当時の記載がこの銀河の全体像を十分に捉えていない可能性を示唆しています。特にハーシェルは、「微かな光が1/4度ほど伸びている」ことに注目し、中心部に数個の星が見えること、さらには自身の観測装置の視野から銀河がはみ出すほどの大きさと広がりのある天体であることを詳細に記しています。

さらに時代が進み、1850年にはアイルランドの天文学者ロス卿がM98を観測しました。彼の記録には、「中心核から両方向に同じ程度に腕が伸びており、次第に微かに拡散している」との記述が見られます。これは、この天体が渦巻構造を持っていることを示唆する、より詳細な観測結果と言えます。

これらの歴史的な観測記録からもわかるように、M98は淡く広がった特徴を持つ銀河であり、観測にはある程度の口径の望遠鏡と、注意深い観察が求められます。その細長い姿と淡い輝きは、天体観測の愛好家にとって挑戦しがいのある魅力的な対象であり続けています。

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