MAGIC TOUCH (山下達郎の曲)

山下達郎 シングル「MAGIC TOUCH c/w I DO」解説

1993年6月8日、山下達郎の24枚目のシングル「MAGIC TOUCH」がリリースされました。表題曲「MAGIC TOUCH」はmaxellカセットテープのCMソングとして書き下ろされた楽曲で、CMにはCGで制作された山下達郎本人の歌っている顔が使用されました。

「MAGIC TOUCH」

この曲は、後にアルバム『COZY』に収録されましたが、当初は選曲から外す予定だったそうです。しかし、スタッフやファンの間で高い評価を受け、最終的にボーナス・トラックとして収録されることになりました。シングルバージョンは、意図的にテンポを遅くしたため、山下達郎自身は「やりすぎて失敗した」と語っています。アルバム収録に際しては、テンポを上げて再編集されましたが、歌やコーラス、楽器の生演奏部分については、時間軸を圧縮する技術を用いて調整しています。そのため、歌は同じ音源でありながら、シングルとアルバムでテンポが異なる、独特の仕上がりになっています。

「I DO」

カップリング曲「I DO」は、アメリカ西海岸のヴォーカルグループ、The Castellsが1964年にリリースした楽曲のカバーです。ブライアン・ウィルソン作曲のこの曲は、1984年のアルバム『BIG WAVE』のコンセプトを踏襲し、山下達郎が一人で全ての楽器パートを演奏しています。当初は、この曲を皮切りに、カバー曲をシングルカップリングに収録し、アルバムとしてまとめる計画がありましたが、実現には至らず、長らく未発表となっていました。後にベストアルバム『RARITIES』に収録され、日の目を見ることになります。

楽曲制作におけるこだわり

「MAGIC TOUCH」のシングルバージョンとアルバムバージョンにおけるテンポの違い、そして「I DO」における一人演奏による緻密なアレンジは、山下達郎の音楽に対する並々ならぬこだわりと、高い技術力を示しています。「MAGIC TOUCH」のテンポ調整においては、デジタル技術を駆使しながらも、生演奏部分の繊細なニュアンスを損なわないよう、細心の注意が払われています。一方、「I DO」は、複数の楽器を一人で演奏するというチャレンジングな試みを通して、楽曲の持つ奥深い魅力を最大限に引き出しています。これらの楽曲は、山下達郎の音楽家としての姿勢と、類まれな才能を如実に表した作品といえるでしょう。

まとめ

「MAGIC TOUCH c/w I DO」は、CMソングとして制作されたポップな「MAGIC TOUCH」と、緻密なアレンジが施されたカバー曲「I DO」という、対照的な魅力を持つ2曲を収録したシングルです。それぞれの楽曲に込められた山下達郎のこだわり、そして高度な音楽技術は、リスナーに深い感動を与え続けるでしょう。これらの楽曲は、単なるポップソングとしてだけでなく、音楽制作における創意工夫や、アーティストの情熱を垣間見ることができる貴重な作品と言えるのではないでしょうか。また、このシングルは、山下達郎の音楽遍歴における重要な位置を占めており、彼の音楽性の一端を知る上で欠かせない作品の一つです。

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