MANGA OPEN

MANGA OPEN（マンガオープン）は、講談社が発行する漫画雑誌『モーニング』および『モーニング・ツー』が共同で主催していた、かつての新人賞プログラムです。1997年に創設され、2014年にその歴史に幕を閉じました。この賞は、単に漫画のネームや完成原稿だけでなく、非常に多様な表現形式を募集対象としていた点で、他の多くの漫画賞とは一線を画し、その独自のスタンスが注目されました。

応募形式と特徴

この新人賞の最大の特徴は、その応募形式の柔軟性と、多様な才能を積極的に受け入れようとする姿勢にありました。漫画作品としては、まだアイデア段階のネームや原作、そして完成した原稿までが応募の対象でした。しかし、それに加えて、イラストレーション、コンピュータグラフィックス（CG）、アニメーション、ゲーム、さらには映画、音楽、そしてフィギュアといった、漫画というメディアの枠を軽々と超える様々な表現媒体による応募を歓迎していました。これは、才能や独創的なアイデアは、必ずしも伝統的な漫画の形式に限定されるべきではないという、主催者の強い信念に基づいたものでしょう。

また、2010年からは「もーたま。」と呼ばれるユニークな取り組みが導入されました。これは、応募された作品の中から将来性を感じさせるものを厳選し、『モーニング』本誌に読切作品として、あるいは最長2ヶ月程度の短期集中連載として掲載するトライアル掲載枠です。新人作家にとっては、商業誌に掲載されるという極めて貴重な機会を得て、読者の反応を直接感じることができる重要なステップとなりました。これは、受賞に至らなかったとしても、次につながるチャンスを提供するという、育成の側面を重視した施策と言えます。

歴史と選考体制

MANGA OPENは、1997年にスタートして以降、年間2回のペースで開催され、応募締切は主に5月末と11月末に設定されていました。その選考体制は、時代の流れとともに変化しました。初期の選考委員には、『沈黙の艦隊』や『ジパング』で知られるかわぐちかいじ氏、『Jドリーム』シリーズのさだやす圭氏、『ハルシオン・ランチ』や『へうげもの』の山田芳裕氏といった、当時の『モーニング』を代表する第一線の作家陣が名を連ねていました。彼らの経験と視点から、多くの才能が発掘されたと言えるでしょう。その後、第31回からは、漫画家の森高夕次氏（代表作：『静かなるドン』など）と東村アキコ氏（代表作：『海月姫』、『東京タラレバ娘』など）、そしてモーニング編集部が選考を担いました。ベテラン作家と現代の人気作家が選考に関わることで、多様な視点からの評価が行われました。

賞の終了と後継

惜しまれつつも、MANGA OPENは2014年の下半期に行われた第37回をもって、その約18年間の歴史に幕を下ろしました。そして、その翌年である2015年からは、新たな新人賞プログラムとして「THE GATE」が開始され、多様な才能の発掘と育成というMANGA OPENの精神は、形を変えて後継の賞へと引き継がれています。これは、常に新しい試みを続ける『モーニング』編集部の姿勢を示すものでもあります。

賞金と副賞

受賞者には、その功績に応じた賞金と副賞が授与されました。最高賞である大賞の賞金は100万円で、作品の内容や将来性によっては、さらに加算されることもありました。これは、新人としては破格の金額であり、受賞者のその後の活動を力強く支援するものでした。その他の賞としては、選考委員の名前を冠した選考者賞が60万円、編集部が選ぶ編集部特別賞が50万円、そして今後の活躍が大いに期待される作品に贈られる期待賞が10万円でした。

これらの賞金に加え、大賞、選考者賞、編集部特別賞の受賞者には、賞金とは別に副賞も贈られました。副賞の内容は回によって異なりましたが、受賞者の創作活動を後押しするものが多かったと推測されます。さらに、すべての受賞者に対し、漫画制作に不可欠な漫画原稿用紙が1000枚贈られるという、漫画賞ならではのユニークな特典もありました。これは、受賞後の精力的な創作活動を物理的に支援するという、編集部の細やかな配慮だったと考えられます。

主な受賞者

MANGA OPENは、創設から終了までの間に、数多くの著名な漫画家やクリエイターを世に送り出しました。この賞を登竜門として、現在第一線で活躍している作家は少なくありません。

例えば、累計発行部数3000万部を超える大ヒット作『宇宙兄弟』の作者である小山宙哉氏は、第15回で大賞を受賞しています（受賞作は『劇団JET'S』）。日常を描いたエッセイ漫画『とりぱん』で人気のとりのなん子氏も、第17回で大賞を受賞しています。また、『ポテン生活』で独特のユーモアを描いた木下晋也氏（第23回大賞）や、東日本大震災後の福島第一原子力発電所での作業員の日常を生々しく描いたドキュメンタリー作品『いちえふ福島第一原子力発電所労働記』で大きな反響を呼んだ竜田一人氏も、第34回の大賞受賞者です。

漫画原作の分野でも、ビートルズが存在する世界線を描いたSF作品『僕はビートルズ』の原作を手がけた藤井哲夫氏が第25回大賞を受賞するなど、その活動領域は多岐にわたります。他にも、ツジトモ氏、アダチケイジ氏、田島列島氏、山本美希氏、肥谷圭介氏、加藤宏氏、魚屋猫助氏、河部真道氏、鵜飼りん氏など、この賞をきっかけにプロデビューを果たしたり、その後のキャリアを大きく飛躍させたりした作家は枚挙にいとまがありません。これらの受賞者リストを見るだけでも、MANGA OPENが漫画界にとどまらず、より広範なクリエイティブ分野に与えた影響の大きさがうかがえます。

MANGA OPENは、約18年間の活動を通じて、従来の「漫画賞」の枠組みを超え、多様な表現形式を受け入れることで、多くの新しい才能を発掘し、育成する重要な役割を果たしました。その斬新な試みと実績は、日本の漫画界およびクリエイティブ産業の多様性の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

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