MAZ-543

MAZ-543について

MAZ-543（ロシア語: МАЗ-543）は、1960年代初頭にソビエト連邦のミンスク自動車工場によって製造された、大型の8×8輪駆動軍用車両です。この車両は、特に1991年の湾岸戦争でイラク軍によって使用されたことで広く知られるようになりました。具体的には、スカッドミサイルや多連装ロケット砲の移動式発射機（Transporter Erector Launcher, TEL）として、多くの国とその派生型と共に運用されてきました。また、民間向けには消防車やクレーン車としての派生型も存在します。

開発の背景

MAZ-543の初プロトタイプは1958年に完成し、その設計は8×8輪のトラックであるMAZ-537を基にしています。1962年には量産が開始され、1965年11月7日のモスクワの赤の広場での軍事パレードで初めて一般公開されました。この時、SS-1C スカッドBを搭載した状態で展示され、多くの注目を集めました。

この車両は525馬力を持つD12A-525ディーゼルエンジンを装備し、11.6メートルの長さで総重量は43トンあります。最高速度は時速60キロに達し、様々な状況下で活躍できる能力を持っています。

設計の特徴

MAZ-543のデザインには、特有のキャビン配置があります。中央にエンジンが配置され、その左右に運転席が分かれているため、中央部分が低くなっています。この構造によって、搭載する弾道ミサイルなどがこのスペースにフィットしやすくなっています。

1970年代には発展改良型としてMAZ-7310が開発され、以降も多数の派生型が生まれてきました。代表的な派生型には、右舷側のキャビンを廃止したMAZ-543Mや、6軸12輪型のMAZ-547などがあります。また、7軸14輪型のMAZ-7912も存在し、これらの車両はそれぞれ異なる用途に応じて設計されています。

中国では、万山特殊車両によってMAZ-543/MAZ-7310シリーズを基にしたWS2400が生産され、DF-11弾道ミサイルやA-100の多連装ロケット砲の移動式発射台として利用されています。北朝鮮軍のパレードにおいては、形状不明の5軸10輪型の派生車両も確認されています。

現在の運用状況

1990年代以降、近代的なモデルに置き換えられつつありますが、ロシア連邦軍では約2,000両のMAZ-543が引き続き運用されています。また、少数ですが生産が続けられているため、全体的な稼働数は維持されています。

主な派生型一覧

• - MAZ-543P: 着陸機材としての役割を果たす輸送車両で、スカッドBやSS-12の発射台としても使用されました。
• - MAZ-543A: 1967年に開発された改良型で、より大きな積載能力があります。
• - MAZ-547: 車体を延長した発展型でRSD-10の移動式発射台に使用されています。
• - MAZ-7910: MAZ-543Mの変種で、S-300の移動式発射台として活躍しています。

これらの車両は現在もさまざまな形式で活用され、軍事や民間の場面でその存在感を示しています。

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